刑事たちの追跡で浮かび上がる黒人青年の哀切な物語
〈人間の証明〉(テレビ朝日)

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   過去に何度も映画化されたりドラマ化されたりした森村誠一のベストセラーである。今回は監督・雨宮望、脚本・浜田秀哉。主演の刑事・棟居弘一良は藤原竜也で、事件の犯人である母親・八杉恭子には鈴木京香が扮して、匂うように美しい美容家を演じている。小説の結末と大きく変えられているが、これはこれで破綻していない。
 有名な2つのワード、「ストウハ」と「キスミー」も健在。設定も1970年代にしてあって、車や電話機などの時代考証に苦心の跡が見られる。何より素晴らしかったのは、所轄の棟居と行動を共にする警視庁捜査1課の横渡刑事(緒方直人)の存在で、寡黙だが、棟居の推理やトラウマを抱えた心情を忖度する先輩刑事として、ちょっと画面に出てくるだけでドラマ全体に重厚感をもたらした。
 西城八十の古い詩集に出てくる「母さん、ぼくのあの麦わら帽子どうしたでせうね」で始まる詩から、スラム街で育った黒人青年の哀切な物語が綴られる。無理をしてこの話を現代に置き換えたりしたら、ジョニーの父親が自分の命を賭して息子のための日本への旅費を作ったという筋書きに無理が出てくる。原作の時代のままでよかったのだ。21世紀風のアップ多用の撮り方ではなく、正攻法の推理展開と、むしろ淡々とした刑事たちの追跡がよかった。童顔の藤原の物足りなさを先述したように緒方が補い、一方、華麗な鈴木京香の過去を知る老婆(草笛光子)の存在も上手く使われていた。
(放送2017年4月2日21時~)

黄蘭

採点:1.5
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