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日野皓正が中学生に往復ビンタ
今週の週刊文春のスクープは、世界的トランぺッターの日野皓正(74)の狼藉現場。
自分が「校長」を務める世田谷区の中学生たちのジャズコンサートで、ソロドラムを叩いていた男子中学生A君に駆け寄り、スティックを奪い取って「馬鹿野郎!」と一喝。さらにA君の髪を鷲掴みにして往復ビンタを食らわせたというのである。
このコンサートは世田谷区の「新・才能の芽を育てる体験学習」の一環として行われ、今年で13回目を迎えた。
日野は区の教育委員会から依頼され、第1回から「校長」をしている。日野は現在活動拠点をニューヨークに移しているから、このコンサートへの意気込みが分かる。
区内の中学生が集められ、4か月間練習し、8月にその成果を発表する。入場料は大人4500円だというから、本格的なものだ。
ワイドショーでは、日野が中学生に駆け寄り、スティックを放り投げたり、大声を上げ、ひっぱたいている映像が流れた(区の教育委員会は暴力があったと認めていない)。
なぜ、日野はここまで大人げない振る舞いをしたのか? メンバーの保護者が、A君が長々とソロを続けたため腹を立てたと話している。
また、このA君、「ドラムの技量が高く、天才肌」(このバンドの関係者)で、個性的な性格から周囲と衝突することも少なくなかったという。練習中にも日野が手を上げたことがあったそうだ。
このシーンを見ていて、ジャズ映画『セッション』を思い出した。ドラマーを目指す若者と厳しい指導者の激しいぶつかり合いを描いた名画だ。最後に若者が指導者のいい付けを守らず、迫力あるドラムソロを叩き続ける。曲は『キャラバン』。その見事なドラムにみなが引きずり込まれたところで突然、映画は終わる。
A君が何の曲でドラムを叩いていたのかここには書いていないが、彼も『セッション』を見ていたのかもしれない。
私は、新宿のピット・インができたばかりの頃に入り浸っていた。日野や、渡辺貞夫、山下洋輔たちが出ていたと記憶している。若い粗削りな日野のペットをビール1本だけとって、飽きずに聞いていた。
ジャズの神髄はインプロビゼーション(即興演奏)にある。日野も自分の若いころを思い出して、自由にやらせてやればよかったのにと思う。
A君が自ら文春に電話をしてきて、自分が悪かった、今回の件で『ドリバン(ドリームバンド)』がなくなってほしくないと訴えている。
才能があるからこそ厳しくした。日野はそういって、A君をドラマーとして育てたらどうだろう。私もジャズが好きだ。オフィスでは四六時中ジャズをかけている。
今日は彼の初アルバム『アローン・アローン・アンド・アローン』を聴いてみようか。