日常の中にある小さな奇跡 心地よい美しい映像
<パターソン>

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Photo by MARY CYBULSKI ?2016 Inkjet Inc.All Rights Reserved.
Photo by MARY CYBULSKI (c)2016 Inkjet Inc.All Rights Reserved.

   ニュージャージー州パターソンの街に住むパターソン(アダム・ドライバー)はバスの運転手だ。毎朝6時過ぎに目覚め、隣に眠る妻・ローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)にキスをして一日が始まる。いつものように徒歩で仕事に向かい、乗務をこなし、休憩時間には心に浮かんだ詩を秘密のノートに書きとめるのが日課だ。帰宅後、妻と夕食を取ったあとは、愛犬・マーヴィンと夜の散歩。散歩途中で決まったバーに立ち寄り、1杯だけビールを飲む。帰宅後は、ローラの隣で眠りにつく。そんな一見かわり映えしない毎日を送る青年の7日間を描いた物語だ。

   主人公のパターソンは30代前半くらい。パターソンの街は、ニューヨーク(ニューヨーク州)にほど近い、ちょっとさびれた雰囲気の地方都市だ。日本でいうなら東京隣県の中規模都市を想像するとよいかもしれない。日常を淡々と静かに描いた作品だが、時に絶妙なユーモアも織り交ぜながら、大量生産されたどこにでもあるマッチ箱、古びたバスの窓に差し込む光、子どもたちのありふれた会話など、日常にあるなにげないものすべてが美しく切り取られ、観ていて心地よい。本作について、監督のジム・ジャームッシュは「ダークでやたらとドラマチックな映画、あるいはアクション志向の作品に対する一種の解毒剤となることを意図している」とコメントしているが、その目的は見事に達成されている。

詩は奇跡を残す言葉

   物語の冒頭となる月曜日の朝、ローラが「双子の夢を見た」と言った後、パターソンは1週間のあいだに何組かの双子に出会う。1週間のうちにそのような偶然は、普通は起こり得ないことだ。しかし、ルーティーンな日常、見慣れた風景にこそ、意識を傾け、目を凝らすことで、じつは小さな奇跡が自分の周りのいたるところで起きていることに気付ける。この映画ではその象徴が双子なのだろう。そして、そんな小さな奇跡を見つけては丁寧にすくい上げ、言葉という形で後世に残す。そんな尊い行為が詩を書くということなのかもしれない。

   日本人の詩人役で登場する永瀬正敏と、本作で優秀な演技を披露した犬に贈られるカンヌ国際映画祭の「パルム・ドッグ賞」を受賞したという愛犬役のブルドッグのネリーは、出演時間は短いものの、じつはパターソンにとって重要なキーパーソン&キードッグになっているのも見どころだ。

おススメ度☆☆☆☆

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