2018年 12月 19日 (水)

手が触れるだけで生きている実感が 障がい者の恋愛描いた映画公開機に語る

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   「障がい者も恋をする、セックスもしたいのに」という、とかく無視されがちな現状を「クローズアップ現代」が改めて問題にした。「ここにも普通の人間がいる」と指し示した意義は大きい。障がい者自身も臆病で、介助の現場でさえ避けてきたのだが、恋愛感情は誰にでもある。一部では新たな模索も始まっている。

   障がい者男女のラブストーリーを描いた映画「パーフェクト・レボリューション」に主演したリリー・フランキーさんは「世界のもう一つのリアル」と位置付ける。

   映画を観た学生からは「知らない世界だった」「理解したいとは思うが、知識がないので批判も同調もできない」の反応が出た。

   NPO代表で自身も両手足に障がいを持つ熊篠慶彦さん(47)は、たとえば「障がい者が使えるラブホテルはほとんどない」「障がい者の恋愛やセックスは目を向けられることさえなかった」と、ときには過激な言葉で当り前の欲求があることを訴えてきた。

   福祉の現場でかかわってきた木村利信・自立支援センター理事長は自慰行為を補助する器具の導入に職員の意見を求めたところ、疑問が続出したという。「自分が対処するかと言われれば、しない」「線引きがむずかしく、非常にデリケートだ」と、すぐに答えは見つからなかった。

   熊篠さんのサイトには「男性として見られないことが当然で、性に向きあえなかった」「性のことを封印してきた」といった相談が集まる。

   脳性マヒから手足に障がいがある女性(35)は「恋愛の話を始めると、周囲からエーッという空気が出る」という。受け入れてくれる男性にようやく出会ったが、思うような性行動ができず「しょせん脳性マヒやな」といわれて、きつかったそうだ。「やっぱり誰かそばにいてほしい。壊れるほど抱いてほしいと思います」の言葉が切実だ。

   リリーさんは「よいことを言ってくれた。どんな状態でも恋愛やセックスをしたいということに気づかない健常者がいます」という。

   熊篠さんは「介護は、ご飯でも入浴でも一つ一つ口に出す。気持ちとしての恋愛や性も口に出さなければならないが、今はタブーにすらなっていない」と語る。

   慶応大学の岡原正幸教授は「障がいと性の両方がタブー。健常者が都合のいいように、そう思っているのではないか。差別意識が潜んでいると考えた方がいい」と指摘する。

   WHO(世界保健機関)はこの問題で福祉の現場でも相談にのることを奨励している。オランダでは保険が適用される。ドイツでは触れあうのをサポートする活動がある。

   日本でも、好きな人に触れるのをサポートする「添い寝介助」が始まった。きっかけは熊篠さんへの相談だった。熊篠さんは作業療法士に呼びかけて検討を重ねてきた。

   難病だが互いの体を重ねたいカップルが触れあい、キスするのを「彼の手を」「もっと前へ」と助ける。近づけた後は、その場を離れる。出会って5年、視線を交わすだけだった2人が手を重ね、キスすることができた。2人は「食事とか映画とか、2人でもっとしたいと思えるようになれた」「彼女の手や指の力、この感覚があれば生きていける」と話す。

   介助した療法士は「こんなに唇を近づけるのに苦労するとは」と言いながら「好きなら触るだけでうれしいじゃないですか。これを大事にしたい」と感想を語った。

   リリーさんは「好きな人に触れると、本当に豊かになれる。手が触れるだけで生きていたいと思える。生命力が生まれるということです」

   岡原教授は「人と人が触れあう当たり前のことを僕たちの社会は忘れちゃっている」

   障がい者が話のできる環境がほしいというのは熊篠さんだ。「周囲の人に話せていれば、僕のところにこんなに相談はこない」という思いがある。これを受けて、武田真一キャスターが「そういう環境を作る責任が健常者にもある。障がい者の恋愛や性に向きあうことは人間として向きあうことだと理解できました」とまとめた。

   「当たり前の感情を理解して」というリリーさんの言葉に、問題が集約されていた。

   普段は表面に出ない問題にスポットがあたった。これからも掘り下げてほしいが、一方でははっきりあるにもかかわらず隠されようとしている問題、森友や加計学園の疑惑を掘り返す問題意識も今、解散総選挙前のこの時だからこそ忘れないでもらいたい。隠れた問題、隠される疑惑、どちらも調べ上げてこそ社会の今をクローズアップできる。

クローズアップ現代+(放送2017年9月25日「障害者と恋とセックス」)

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