メーカーが知らないうちに製品が劣化、発火事故 下請け企業の仕業
「サイレントチェンジという言葉、ご存知でしょうか」(武田真一キャスター)
メーカーが知らない間に、下請け企業によって製品部品の材料や仕様が変えられることで、家電の突然の発火など事故につながるケースが少なくないそうだ。事故は製造後、数年で起きることが多いため、「静かなる時限爆弾」と呼ばれているという。
サイレントチェンジが原因と疑われる例には、プロジェクターの電源コードから出火、こたつのヒーターの落下による火災、通信機器のプラグが焦げた、などがある。今年は、パソコンが内部でショートして故障する事故が相次いでいるという。
家電にとどまらず、折り畳み椅子や靴でも事故が発生。椅子のネジが変えられたために椅子が壊れ、使用者が転倒、重傷を負った。靴では、底の素材が滑りやすい素材に変えられたため、購入したばかりのユーザーが2回も転倒し、打撲などのケガをしたという。
こうした背景にあるのが、モノづくりのグローバル化とコスト競争だ。日本メーカーは部品の製造を台湾や中国の企業に委託。さらにそこから多くの下請け、孫請けのメーカーが関わる構図になっている。下請け企業のなかにはコスト面の問題から、耐久性や安全性が劣る部品をメーカーに知らせずに採用してしまうところがあるという。
「どこかひとつでも材料を変更してしまうと、その責任が日本メーカーに降りかかってくるという構図なんです」(鎌倉千秋キャスター)
もっとも最近では、神戸製鋼が仕様に満たない製品を自動車メーカーに納入するなど、日本企業でも似たようなサイレントチェンジは見られるという。
「私たち、一番怖いのは事故に巻き込まれることだと思うんですが、身を守る手立てはありますか」(武田)
消費者も情報発信を
「ないですね(笑) メーカーだってわからないのに、消費者がわかるわけがない。ただ、消費者にも役割、責任がある。自分の身は自分で守るというのが非常に大事で、そのためには普段から、『臭うな』とか『少し熱くなったな』とか、チェックすることが大事。そして、『ヒヤリハット』があったら、黙ってないで、ちゃんと自分から情報発信する。メーカー、または消費者センターでもいいが、情報を伝えることが大事だ。それが仲間を救うことになるし、日本の安全はそういう力でだんだん盛り上がっていくのではないか」(製品事故の調査を歴任してきた製品安全のエキスパートだという向殿政男・明治大学名誉教授 )
✳クローズアップ現代+(2017年10月24日放送「家電が突然発火する!? サイレントチェンジ」)