2018年 5月 21日 (月)

暗い時代の予兆か、座間・頭部切断事件 締め切りに間に合わなかった週刊誌が生きる道

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   過去にも数々の猟奇事件があった。神戸児童連続殺傷事件、女子高生コンクリート詰め殺人、八つ墓村、津山三十人殺しなどがすぐに浮かぶ。

   だが、神奈川県座間市で起きた9人の頭部切断事件は、文字通り背筋を凍らせるだけでなく、これから来るであろう暗い時代の予兆のような事件に思えてならない。

   これまでも自殺サイトで知り合った男女たちが集団自殺を図ろうとしたり、今夏、大阪の会社員が自殺サイトで知り合った男女3人を殺す事件などが起きているが、今回のはどこか違うように思う。

   事件発覚のきっかけは、東京都八王子市の女性(23)が10月21日から行方不明になり、彼女の兄が警視庁高尾署に届け出たことからだった。

   女性はツイッターで「一緒に死んでくれる人を探している」などと投稿していたそうだ。 アパートの狭い部屋で、切り取った頭部などを入れ、猫のトイレ用の砂をかけたいくつものクーラーボックスとともに暮らしていた白石隆浩容疑者(27)とは、どんな人物なのか。

週刊誌のサイクルが時代に合わない

   週刊誌の格好のテーマだが、残念ながら週刊新潮、週刊文春ともに締め切りの関係で間に合わなかった。

   かろうじてフライデーが突っ込んでいるが、目新しい話はない。

「白石さんの家は両親と彼と妹さんの4人家族です。隆浩君は子どものころから悪いウワサなどもなく、素直な良い子というイメージしかありません」(近隣住民)

   こうした大事件が起きるたびに、週刊誌というサイクルは時代に合っていないと思う。

   テレビのワイドショーが事件を連日放送し、J-CASTに代表されるネットメディアも毎日のように報じている。週刊誌も何らかの策を講じなくてはいけない。

   私なら、取材記者たちを動かして原稿にし、ネット上で情報を日々更新する。すべて無料で読める。週刊誌でしかやれない切り口で報じ、それを編集して次号に掲載すればいい。

   週刊文春はデジタル版(有料)がある。そうした試みをやっているかと思って覗いてみたが、やっていないようだ。それならば、今日からでも始めるべきだと思う。

またも立憲民主党議員にセクハラ疑惑

   こうした事件が起こると、週刊文春の巻頭特集「立憲民主党に強制わいせつ疑惑」も影が薄い。先週は同党で初当選した青山雅幸議員のセクハラ疑惑を報じ、福山幹事長が青山の党員資格停止処分を発表した。

   だが政治部記者にいわせると、枝野代表と大学のサークルが一緒だった「お友だち」だから、年明けの通常国会では会派に入れるといわれているそうである。

   今回疑惑をかけられたのは、東大法学部卒で議員秘書、都議を経て民主党から出馬し初当選、現在当選3回の初鹿明博議員(48)。

   私生活では自ら「宝物」といっている妻と3人の子供がいる。だが、女性にはだらしないようで、昨年12月には週刊新潮で「不倫未遂」を報じられている。

   舞台女優と個室で食事をした際、女性の胸を触り、自分もズボンを脱ぎ始めた。歌舞伎町のラブホへ連れ込もうとして失敗したという。

   今回は「性暴力事件」だというから穏やかでない。被害者は佐藤陽子(仮名)で、初鹿の支援者の一人だった。

   15年5月、港区内で初鹿議員を囲む懇親会が開かれた。二次会を終えた時点で議員は呂律が回っていなかったと佐藤はいう。

   深夜お開きになり、初鹿と3人でタクシーに乗った。1人が途中で降りる。するといきなり議員はキスを迫ってきた。佐藤はショックのあまりフリーズしていると、初鹿は無言のままズボンのチャックを降ろし、彼女の顔を引き寄せたというのだ。

   昨年12月に議員から謝罪を受け、初鹿はこういったそうだ。「嫌じゃなかったと思った。ひどいことしたのかな。反省しています」。

   佐藤は、事があった直後に被害届を警察に出そうと考えたが、「立場のある方」だと見送ったという。今回週刊文春の取材を受けて、「セクハラや性暴力の被害者にとって、心の傷は長く残り、加害者から謝罪を受ければ終わるわけではありません。(中略)それをわかって頂きたくて、お話ししたのです」。さらに「重大な問題だと再認識しました。改めて提出を検討します」と話している。

   当の青山議員は「記憶にない」と繰り返すばかりだが、長谷川裕雅弁護士によると、国会議員という支配的な立場にあり女性は拒否不能だったと判断されるから、準強制わいせつ罪に当たり、タクシー内で性器を露出するのは公然わいせつ罪にも当たる可能性があるという。

   アメリカでは、大物プロデューサー・ワインスタインによってセクハラを受けたという女優たち80人以上が告発して大騒動になっている。

   この事件を矮小化するために手を貸したと、ワインスタインの秘蔵っ子、タランティーノ監督が謝罪し、彼を擁護する発言をしていた社会派監督のオリバー・ストーンも、自身のセクハラを元モデルに暴露されるなど、ハリウッド界はこれまで「公然の秘密」として、メディアが暴露しようとしても潰されてきた映画界の闇が、ようやく明るみに出ようとしている。

   日本でも映画・芸能界はもちろんのこと、政界からメディアまで、権力を笠に着てセクハラや強制わいせつが行われてきた。伊藤詩織が山口敬之の「レイプ」を告発したが、ジャーナリストの彼女が中心となって「映画、芸能プロ、政界、メディア」のセクハラを告発する団体を作ったらいいと思う。

小池代表にあった3日間のチャンス

   週刊新潮では、小池百合子と前原誠司に対する「身内からの罵詈雑言」をやっているが、引かれ者の小唄の感は否めない。

   だが、小池も長くは持たないだろう。トランプと小池のどちらが先に辞める(辞めさせられる)か、いい勝負ではないのか。

   アサヒ芸能に、小池の「排除発言」を引き出したジャーナリストの横田一が寄稿している。そこで横田は、「小池氏が排除発言を白紙撤回する猶予は、立憲民主党が結成されるまでの3日間あった」といっている。

   「その間にリベラル派を受け入れる寛容さを見せていれば、まったく違う結果が待っていただろう。『排除されない』と議員の前で話した前原氏よりも小池氏のほうが『正直』だった。その反面、『私が排除を言う分には許される』と、小池氏は自分の人気を過信した」としている。

東京新聞・望月衣塑子記者への忠告

   安倍首相の4度目の首相就任会見をテレビで聞いていて、その内容のなさに愕然とした。お前は国民をバカにしているのかと、テレビに向かって吠えた。

   そんなたわ言をハイそうですかと聞き、突っ込んだ質問もできない官邸の記者たちに怒りが湧くどころか、哀れとさえ思えた。

   菅官房長官への厳しい突っ込みで一躍有名になった東京新聞の望月衣塑子記者の『新聞記者』(角川新書)を読んだ。

   内容は新聞記者の取材合戦の秘話よりも、彼女の人生を振り返っている部分が多いが、面白いところが2カ所あるので紹介しよう。

   望月の某スクープが大きな広がりを見せたが、ある大臣から訴えられ、東京地検に事情聴取される。完黙したこともあり、会社側は不起訴になるのだが、会社は彼女を整理部へ異動させてしまう。

   その時、テレビや他の新聞がうちに来ないかと声をかけてくる。中でも読売新聞が高く評価してくれたので、心が傾き、父親に「背中を押してほしいと思い」会って、そのことを話す。

   彼女の父親は業界紙の記者だったが、ジャーナリストとして一本筋が通った人だったようだ。その父親が「お父さん、読売だけは嫌なんだよ」と娘に、切なそうに訴えたという。私の父親も読売だった。読売に入るという選択肢もあったが、講談社を選んだ。いまでもその選択は間違っていなかったと思っている。

   菅への質問で注目を浴びた望月だが、その報復は、手を上げている彼女を指名しないことだった。だが、それ以外にも驚くべきことがあった。

   「8月下旬、菅長官側は幹事社を通じて菅番の担当記者に、会見時間を短縮したいとの趣旨を打診してきたという。番記者側は『時間制限はできない』と突っぱね、要求はのんでいないというが、『あと〇人』『あと〇問』と官邸の広報官が質問を打ち切っているのを認めているのが現状だ。

   これは、メディアの自殺行為ではないか」

   呆然として涙があふれそうになったと書いている。

   この記述に私は呆然とした。まだそんなことをいっているのか。記者クラブが言論を歪め、国民の目から政府の不都合な真実を隠しているのは自明の理ではないか。

   甘いといっては失礼だが、それだからこそ、望月の菅に対する執拗な質問が多くの国民に支持されたのではないか。

   今や記者クラブを含めた記者たちは、権力にたてつくのではなく、権力側の番犬に成り下がっている。これは常識であろう。

   泣いている場合ではない。東京新聞というローカルな新聞だからこそできることがある。安倍首相も嫌々ながら国会の延長を認めた。森友・加計学園問題追及は野党だけに任せてはおけない。

   社会部の精鋭をこの時期だけ政治部に移し、菅官房長官の会見でとことん質問させるのだ。菅が顔を歪め、もうまいったというまで追及するのだ。そうすれば世論が味方に付き、他紙もやむを得ず追随せざるを得なくなる。

   安倍政権は水漏れ状態だ。ちょっとでも穴が広がれば崩壊する。そうやって新聞記者たちは、権力に対する番犬としての矜持をとり戻せ。そう彼女にいいたい。

無所属議員・中村喜四郎のすごみ

   ところで中村喜四郎(68)という政治家をご存じだろうか。当選14回になる、経歴からいえば最古参の現役である。

   元自民党で元建設大臣。総理候補といわれたこともある。だが、メディアで見かけることはもちろんのこと、永田町でも会期中以外には姿を見ることはない。

   それは、94年のゼネコン汚職の時、斡旋収賄容疑で逮捕されたが、東京地検特捜部の取り調べに一貫して完全黙秘、無罪を訴えた。だが、懲役1年6か月の実刑判決を受けたのである。

   国会会期中に逮捕されるという異例のことだったが、中村は「国会の正面玄関で待っているから、堂々と逮捕しに来い」と啖呵を切った。

   私は、逮捕される前に何度か会ったことがある。彼は40代だった。カッコいい青年政治家で、言葉も柔らかく、末は大物になるという風格を備えていた。

   人生は暗転した。だが、そこからが中村のすごさである。大量の中傷ビラがまかれる中で、有権者へ真実を話していくという彼の姿勢が通じて、多くの後援会は離反せずにとどまった。

   今回の衆院選でも出陣式には4000人が集まったという。街頭にはポスターが1枚もないのに、選挙区の家や店には中村のポスターだらけだったそうである。

   無所属の一匹狼で、政治に対する発言力はあるのかと問うと、

   「無所属であるということは、政策でも政治姿勢でも、いっさい人に気兼ねをしなくて済みます。だから、国民の立場でいろいろものを言うし、ものを考える。私は共謀罪採決でも反対票を投じた。節目節目で、キャリアのある政治家がどういう動きをするかというのは、見る人は見ています。(中略)

   国民目線で、安倍氏のやっていることは許せないといったとき、行動を起こせる人がベテラン国会議員のなかにいないといけない」

   安倍政権については、

   「消費増税を延期するための解散なんて、国政選挙では絶対やっちゃいけない。中長期的なビジョンをまったく示していない」

   異論をいえない雰囲気があるが、という問いには、

   「だんだん自分の考えを言わない習慣が、自民党のベテラン議員でも身についてしまっている。無所属で、感性を研ぎ澄ませていかないと」

   小泉純一郎の秘書だった飯島勲が週刊文春の連載で、無所属で勝ち続ける中村を「スゴイ」と讃えている。

   「森羅万象に通じる中村氏はあと10年は活躍できるよ。尊敬する二階俊博幹事長、NYKK(かつて山崎拓、加藤紘一、小泉進次郎とともに将来を嘱望されていた=筆者注)の最後の生き残りを何とか復党させていただきたく、お願いしまーす」

と書いている。永田町最後のサムライなのかもしれない。

習近平への危うい権力集中

   最後に現代・近藤編集次長による中国情勢の分析。10月24日に第19回共産党大会が閉幕した。

   話題は、今後5年間、中国を率いる「トップ7」の顔ぶれである。60代のイエスマンばかりを集め、習近平主席は、死ぬまでこの座を離さないと、国内外に知らしめたといわれている。

   それに「ミスター・ギロチン」と畏れられた王岐山を「定年退職」させてしまった。これは、周恩来を終生切らなかった毛沢東と比べると、「度量も権謀術数も習近平は持ち合わせていない」(近藤)ということのようだ。

   それほど習近平一人に権力を集中した中国は、長期的に見ると危ういと近藤次長は見る。

   「習近平総書記は、スーパーマンではない。習近平書記がカゼを引いたら、すべてがストップするような国に中国がなるのだとしたら、習総書記が目指す『2049年(建国100周年)に世界一の強国になる夢』は、邯鄲の夢に終わるだろう」

   今の日本に求められるのは、アジアの国と連携を深め、アメリカ、中国、ロシアの三大国と等距離を保っていくことだと思う。

   アメリカに従属している安倍首相では、その舵取りはできまい。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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