2018年 11月 19日 (月)

〈泥棒役者〉
役者・丸山隆平の渾身の嘘を見よ!

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   鍵開けの名人だったはじめは、泥棒稼業から足を洗い真面目に小さな町工場で働き、優しい恋人と仲睦まじく暮らしていた。ところがある日、出所した先輩泥棒に脅迫され、盗みを手伝わされるハメとなり、絵本作家が住む豪邸に忍び込む。金品を物色していると、何者かが玄関に入ってきて、はじめは自分が家主であると嘘をつき誤魔化すが、本物の家主の絵本作家がリビングに現れると......。

   西田征史監督が2006年に作・演出した舞台を、自ら映画脚本化したコメディー。丸山隆平(関ジャニ∞)が単独初主演を飾り、市村正親、ユースケ・サンタマリア、石橋杏奈、宮川大輔、高畑充希、峯村リエといった個性派キャストが「すれ違い」の掛け合いに挑む。

   嘘によって作られた状況が新たな嘘を呼び、それにより四苦八苦することは、誰にでも経験があるだろう。本作は様々な嘘が複雑化していき、集結していくワンシチュエーションコメディだが、このような密室型の物語には緻密な脚本が要求される。本作の脚本は非常に良く練られており、嘘によって崩壊していく脈略が、予測不可能な物語を生み、人間ドラマをも生んでいく。ドラマの中では偶然でも、脚本において偶然などはない。嘘や勘違いがバラバラに散らばっていく中で回収されていく伏線の妙は、もはやスペクタクルの領域に達しており、登場人物が嘘を付けば付くほど登場人物のバックボーンが見え隠れし、登場人物の個性が浮き彫りになっていく手法は見事であり、嘘によって縛られた登場人物の収拾が付かなくなることで物語を収拾させていく様は心憎いまでの巧妙さだ。

   役者陣のコミカルな掛け合いがとにかく面白い。役者たちが物語の進行と比例して芝居に凄みが増していくのが印象に残る。そもそも役者とは嘘を演じる職業であるから、嘘を付けば付くほど迫真的な芝居になるというのは必然的なのかもしれない。中でも主演の丸山の芝居なのかどうかあやふやな天然の魅力は、勘違いやすれ違いを経て形成される物語に奇跡的な説得力を与えている。喜劇であり、はじめの成長物語である本作だが、「役者・丸山隆平」の渾身の嘘こそを見ていただきたい。

おススメ度☆☆☆☆

丸輪 太郎

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