2024年 4月 24日 (水)

矛先は日馬富士から白鵬へ 「もっと悪い」と文春、新潮が大特集

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   日馬富士暴行騒動だが、週刊誌の矛先は白鵬に向かっている。日馬富士も悪いが白鵬はもっと悪いと、週刊文春と週刊新潮が大特集。

   週刊新潮から見てみよう。初顔合わせで白鵬を破った貴ノ岩は、「白鵬が優勝回数など複数の記録を塗り替えて称賛されてきたことにも疑問を呈していた」という。

   そこで白鵬は目障りな奴に説教する機会をうかがっていたそうだ。また、騒動当夜の凶器は「ビール瓶」ではないと場所中にもかかわらず記者たちに話したが、「本当はビール瓶で殴ったのではないか」という疑惑はくすぶっていると、思わせぶりだが、これは鳥取県警が「ビール瓶では殴っていない」と結論付けているそうだから「疑惑」のまま。

   注目は、相撲協会と記者たちの「ぬるま湯"無気力相撲"」に言及していることである。

   今年の10月7日、湯河原の高級ホテルに八角理事長をはじめ相撲関係者が集まっていた。

   そこにはテレビ、新聞などの相撲記者たちも同席していた。1泊2日の両者の親睦会で、参加費は1万5000円。だが、一流ホテルで山海の珍味と酒、二次会のカラオケではコンパニオンも呼んだというから、この金額では収まらないだろう。

   また12月4日には、国技館の本土俵で、記者クラブの記者がまわしを付けて相撲を取る「お遊び大会」も予定されていたという。

   さすがにこの時期はまずいと中止になったそうだが、ジャーナリズムに一番大事な、取材相手との距離感が、この記者たちにはないという一例である。

   あとはスポーツ評論家といわれる玉木正之の蘊蓄が面白い。貴乃花親方が改革というが、「相撲の世界は改革なんて要らない。伝統を守ることが必要です。稽古の稽は考えるという意味で、稽古とは古きを考えるという意味」だそうだ。

蒸し返される「八百長事件」

   週刊文春は古きを訪ねて新しきを知る大特集。まずは2011年の「八百長事件」から始める。

   この問題で廃業した元力士が、この事件で処分されたのはほとんど十両ばかりで、それも27、8歳で、この先がない連中ばかりだったと話す。

   週刊文春は、八百長関与が認定されて引退勧告を受けたモンゴル出身力士は、処分者の4分の1に当たる6人もいたとして、現在もモンゴル力士たちの間では八百長が行われているのではないかと匂わせる。

   また週刊新潮と同じように、貴ノ岩を殴ったのは日馬富士だが、白鵬も共犯者だと、貴乃花が見ているとしている。

   その後の白鵬の「貴乃花が巡業部長なら行きたくない」発言が、貴乃花と白鵬との対立を強烈に印象付けたと続ける。

   どうしても白鵬の40回の優勝にケチを付けたい週刊文春は、週刊現代の過去の記事まで引っ張り出す。朝青龍と白鵬の八百長を宮城野親方(当時元十両・金親)が、愛人に告白し、八百長にかかった額はと聞かれ「300万!」といった会話のテープがあると、週刊現代が報じた。

   宮城野は酔っていてもうろうとして話したので、デタラメだと釈明している。

   この一連の八百長追及記事は、相撲協会側から損害賠償請求がなされ、週刊現代側は敗訴するのだが、週刊文春は、この部分については協会側から提訴されていないではないか、信ぴょう性はあるとしている。

   また、週刊文春が以前報じた白鵬の「愛人」との2ショットや、彼を取り巻く怪しい「タニマチ」を持ち出して、白鵬の横綱としての品格に疑義有りと迫る。緊急の読者アンケート「ほんとうに悪いのは誰か」をとり、1位に日馬富士ではなく白鵬がなったと、白鵬悪人説を読者に押し付ける。

   日馬富士があっさり辞めてしまったため、貴乃花の相手役を見つけなくては誌面が持たない。そこで白鵬を攻撃目標にして、モンゴル力士に八百長の疑いありとするのは週刊誌の常道である。

   私も相撲には八百長があると思っている。だが、八百長だけで40回も優勝することはできはしない。

   また、貴乃花のやり方にも問題がある。FLASHが掲載した貴ノ岩の近影を見る限り、重傷で寝たきりとは思えない。白鵬をやり玉に挙げるのなら、貴乃花と貴ノ岩の処し方も追及するべきではないか。

スクープ飛ばしても部数減った週刊文春

   ところでABCの雑誌部数(2017年1月から6月まで)が発表された。軒並み部数減である。

   中でも週刊文春が40万部を切り約37万で、前期比87.17である。週刊現代は2番目だが、約26万部で、前期比は84.19。

   週刊新潮は約25万部で96.21。週刊ポストは約22万部で88.32。フライデーは約13万部で、89.82である。

   月刊誌だが文藝春秋は約25万部で89.96。週刊文春はあれだけスクープを飛ばしながら部数大幅減である。

   何のためのスクープか?新谷編集長はどう考えているのだろう。

天皇退位・即位時期めぐる官邸の意図

   天皇退位の日程が決まった。それを巡っても宮内庁と政治はバトルを繰り広げていたと、有識者会議で座長代理を務めた御厨貴が、朝日新聞(12月1日付)で語っている。

   安倍官邸は当初、平成30年の大晦日、退位、元旦、即位&改元にしたかったが、これに宮内庁が抵抗した。年末年始には皇室行事が重なるから、3月末日退位、4月1日即位にしたいと主張して、その日程をメディアにリークしたのだ。

   だが、今度は官邸がそれをひっくり返して、4月末日退位、5月1日即位にした。御厨も「改元の日はメーデー(労働者の日)ですよ」と驚いている。

   何としても宮内庁、その後ろにいる天皇・皇后のいいなりにはならないという、安倍の強い「決意」が窺える。

   週刊新潮は、侍従職関係者に、天皇の思いをこう代弁させている。

   「陛下は、"心残りがあるとしたら......"という言葉を口にされています。具体的には、女性宮家を創設できなかったこと、そしてアジアで訪問していない国があること、ですね」

   安倍首相は、女性宮家が固まれば、女性天皇の議論も深まることを恐れたのだといわれている。

   当然ながら、訪問していない国「韓国」に対しても、安倍はいい感情を持ってはいない。

   秋篠宮も、皇位継承のあり方という天皇が提起した問題がほとんど進んでいないことに言及して、「議論が進んでいない、確かに進んでいないのですけれども、そのこともやはりこれはある意味で政治との関係にもなってくるわけですね」と語っている。

   天皇とは学習院初等科から高等科まで「ご学友」だった榮木和男も、こう話す。

   「安倍政権になってからいろいろなことが進まなくなったという状況があって、陛下が焦りのようなものを感じておられたのは当然そうだと思います。自分たちが言いださないと、誰も何もしてくれないということがだんだんわかってこられた。それで、異例かもしれませんが、ああいう形の『お気持ち表明』になったんじゃないでしょうか」

   天皇が政治的な発言をすることは憲法で禁じられている。それを十分に知りながらも、そうした発言をせざるを得なかった天皇の気持ちを、安倍は「忖度」することはなかったのである。

ジャーナリズムのご意見番亡くなる

   原寿雄が亡くなった。享年92歳。元共同通信社編集主幹というよりも『デスク日記 マスコミと歴史』(みすず書房)の著者、小和田次郎のほうが、私にはピンとくる。

   少なくとも、ジャーナリズムを志す者は一度は読んだであろう名著である。

   私は、鳥越俊太郎がキャスターを務めていたテレビ朝日の「ザ・スクープ」が終了させられることに反対する会で会ったのが最初である。

   最初の印象はよくなかった。新聞や通信社がジャーナリズムで、お前たち雑誌屋は一段下だという意識が見え見えの発言に、食ってかかったことがある。

   だが、彼の話すジャーナリストとしての心構え、権力批判、新聞批判は的を射ていて、胸のすく思いがしたものだ。ジャーナリズムのご意見番であった。もっと話を聞いておけばよかったと思う。

北朝鮮空爆はあるか?

   さて、トランプ米大統領が北朝鮮を攻撃する腹を固めたという。空爆するのは12月17日だというのは週刊文春、クリスマスだというのはサンデー毎日である。

   週刊文春の根拠は、この日が故・金正日の命日だからというもの。週刊現代のほうは、クリスマス休みで韓国にいるアメリカ人たちの多くが帰国しているから。

   週刊現代の労働党幹部インタビューを読む限り、北朝鮮への圧力は相当な効果を出しているようだ。

   幹部の口から、現在、90年代に200万人が餓死したといわれる「苦難の行軍」の再来だといわれ、平壌でも、落ちたトウモロコシを拾って食べている子供を見かけるという。

   だが「『貧しいから(北朝鮮が)白旗を掲げる』という考えは、完全に誤っている。むしろ貧しくなればなるほど、われわれは戦争の道を選択するだろう」といっている。

   そうだろう。主体思想で洗脳させられた多くの北朝鮮の国民には、誤ったアメリカ帝国主義を倒すことこそ、理想の国家をつくると信じているのだから。

   件の幹部は、北朝鮮問題を解決するには、「トランプ自身が平壌に来るのが、一番の早道だろう」という。

   私は、北朝鮮攻撃はないとみている。ましてや核戦争の可能性などあるわけはない。

   北朝鮮政策では穏健派のティラーソン国務長官を辞めさせ、強硬派を据えたところで、トランプは結局、北朝鮮攻撃などできはしない。

   冷戦真っ只中の85年。米ソ首脳のレーガンとゴルバチョフがジュネーブで会談した。雰囲気は最悪だったが、ゴルバチョフの粘り強い話し合いの姿勢と、「核戦争に勝利者はいない。核戦争は絶対してはいけない」という意思に、レーガンも合意し、世界中が驚いた「核兵器を50%削減する」ことを発表したのである。

   レーガンを尊敬するというトランプは、この故事に倣い、平壌ではなく第三国で米朝首脳会談をやることを提案すべきだ。それが最善の道である。

先行き暗い日本経済

   今週は週刊現代のこの記事が一番面白かった。世界3大投資家の一人ジム・ロジャーズが、日本経済の先行きを「極めて悲観的に見ている」というインタビュー記事だ。

   彼はアメリカの投資情報ラジオ番組の中で、もし私がいま10歳の日本人だったら、

「そう、私は自分自身にAK-47を購入するか、もしくは、この国を去ることを選ぶだろう。 なぜなら、いま10歳の日本人である彼、彼女たちは、これから大惨事に見舞われるだろうからだ」

   インタビューの中で、今の日本株が上昇しているのは黒田日銀総裁がじゃぶじゃぶ紙幣を刷ったうえ、日本株や日本国債をたくさん買っているからで、今の株高は「日本政府が人工的に株を上げているに過ぎない」(ジム)

   しかし、10歳の子どもが40歳になるころには、「日本は大変なトラブルを抱えていることでしょう」(同)

   「20年後に振り返った時には、安倍晋三首相は日本経済を破壊させた張本人として歴史に名を残しているでしょうね」(同)

   だが解決方法はいたって簡単だという。「まず財政支出を大幅に削減し、さらに減税をする。この2つを断行するだけで、状況は劇的に改善します」(同)

   そして、日本人にとって一番の解決方法は「将来にツケを回すような政府を退陣させることなのでしょう。日本国民がイニシアティブを取り戻して、国の借金を減らし、人口を増やす構造改革に着手する。そうするだけで、状況はいまよりずっと改善すると思います。日本人は早く動き出すべきです。日本の破産はもうすでに始まっているのです」(同)

   外国人にいわれなくてはわからない、日本人という民族の弱点を、つくづく感じさせる好インタビューである。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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