2018年 5月 22日 (火)

投資には絶好の「適温経済」? 高まる期待にひそむ想像を絶する危機

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   世界中で株高が進み、景気の拡大が続いている。一方で物価があまり上がらないことから、投資にはちょうどいい「適温経済」とも呼ばれる。このままどこまでいくのか、リーマンショック当時のようなリスクはないのだろうか。

   株高震源地の米国では、ニューヨーク株式市場が史上最高値を更新し続ける。中央銀行(連邦準備制度理事会)が3・6兆ドルを投入しているうえに、トランプ政権が法人税の大幅引き下げを打ち出したことが空前の株高を招いたとみられる。

   影響はもちろん日本にも。日経平均はこの1年間で3650円上がり、26年ぶりの高値をつけた。英国ヘッジファンドの運用責任者は「今年もポジティブなリターンが続く」と、バブル再来を期待する。

   日銀による世界に例のない金融緩和が下支えになっている。上場企業の株式を組み合わせたETF投信を買い続けた額が去年(2017年)は15兆円を突破した。

   大和総研のアナリスト・熊谷亮丸氏は「輸出も着実に伸びており、景気拡大は続く」と見る。国民の懐具合もやがてよくなり、日経平均は年内に2万7000円まで上がると予想する。

   これに対して、BNPバリバ証券の中空麻奈氏は「株高は今年前半までは続くだろうが、後半はどうか」と懐疑的だ。日銀のスタンスが変われば、景気は息切れし、不透明感が出る。過剰なドル高の反動も考えなければならない。

   「ETFの買い入れは禁じ手の一つ。日銀の買い入れを期待して投資するのはおかしい。日銀が大株主になると、議決権をどうするのかなど、さまざまな問題も出てくる」という。

米ヘッジファンド「リーマンショック時に似ている」

   一方で、一般の人は好景気の恩恵を受けたのか。企業の取り分だけが増えて、個人の分はいっこうに増えない。

   熊谷氏は「それが景気を拡大させている」と話す。物価が上がらずに、景気過熱を避けられるためだ。だとしたら、まるで企業のために個人がいるような状態ではないか。

   中空氏は「個人と企業だけでなく、個人間でも経営者や投資家と庶民に差が出る」として、富の分配をきちんとやる必要を説く。

   リーマンショックの引き金は米国の低所得者向け住宅融資、サブプライムローンが出回ったことだった。「適温経済」にリスクの芽はひそんでいないのだろうか。

   いま低所得者向けの自動車ローンが「バブルにつながりかねないリスクがある」と危惧する声がある。返済できない人が急増、業者が車を回収する状態を、ニューヨークにあるヘッジファンドの社長は「リーマンショックを思い出します」と話す。

   ロンドンに拠点を置くヘッジファンドは、日本の株式市場に重大なリスクがあるとの見方をする。「とりわけ金融機関に問題がある」という。日銀のマイナス金利政策が地方の金融機関を直撃し、そうでなくても人口減や高齢化で貸し出し相手を見つけられない地方銀行などはたまらない。

世界の負債総額は1京8000兆円、統制不可能は天文学的額

   世界的投資家のジム・ロジャース氏は「大規模な金融緩和がいずれ危機につながる」と言い切る。世界の負債総額は今や1京8000兆円と、天文学的な数字に達した。「問題が起きたら、想像を絶する事態になる」

   熊谷氏は中国を心配する。国内総生産の倍近い借金を抱える中国は、日本のバブル崩壊寸前と似ている。中東の混乱から原油高になる危険も警戒を要するという。

   中空氏が問題にするのは、ジャブジャブにあふれ出たカネの行方だ。「ファンドとかに資金が流れると、政府の管理がゆきわたりません」。何か起きた時には遅いかもしれない。

   では、いま日本がやるべきことは?

   AI開発や設備投資などを通じて「日本全体が稼ぐ力をつけ、すべての人に富が回るようにすることです」と、中空氏は指摘する。熊谷氏も人口や社会保障対策、既得権打破などの構造改革を「短期的改革に甘んじずに中長期で進めよう」と強調する。ケネディ元米大統領の「太陽が出ているときに屋根を修理するべきだ」という格言が説得力を持ってくる。

   好景気の中で膨らみ続けるリスク。被害をこうもるのは、たいていの場合、もうけに躍る投資家よりも一般庶民だ。だれのための社会にするか、まずはしっかりと位置付けて対応してほしい。

NHKクローズアップ現代+(2018年1月15日放送「世界同時株高のゆくえ~大物投資家が大胆予測」)

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