2018年 7月 23日 (月)

総好かんトランプ支えるキリスト教「福音派」中絶・同性愛認めぬ聖書忠実主義

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   アメリカのトランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都と認めると宣言したが、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地が混在する複雑な問題に、なぜ首を突っ込んだのか、背景にはアメリカの政治と宗教の特異な風土があった。

   エルサレムは1967年の第三次中東戦争でイスラエルが占領し、聖地のある東エルサレムを支配下に置いた。国際社会の「撤退要求」を退け、2002年からは巨大な分離壁を建設して、パレスチナを隔てた。米議会は1995年に「イスラエルの首都」と決議をしたが、大統領は3代21年にわたって先延ばしにしてきた。

   それをトランプがあえて破ったのは、「福音派」の存在だった。福音派は中絶や同性愛に反対するなど保守的なキリスト教の教団で、トランプ大統領の選挙戦で大きな役割を果たし、牧師が政権アドバイザーを務めるなど深く入り込んだ。ペンス副大統領も信者だ。ホワイトハウスのギドリー副報道官は「トランプ大統領は福音派との約束を守ったのです」とその影響を認める。

アメリカの人口の4分の1を占める大票田

   バージニア州のメガチャーチと呼ばれる大規模教会では、「神は素晴らしい。きょう私は許される」と、集まった信者たちがまるでコンサートのように歌っている。これが礼拝で、聖書の教えに忠実。エルサレムの平和を祈るのも、聖書にそうあるからだし、「首都宣言」はその延長上にある。

   福音派指導者のネリー・ファルウェル・Jr氏は、当初、トランプは福音派を理解していなかったと言う。「神に許しを求めたことがあるかと聞いたら、『何のために?』と言いました。福音派は、すべての人は罪人で、神の許しを必要としていると考えます。トランプはそれがわからなかった」

   しかし、福音派はアメリカの人口の4分の1を占める大票田だ。トランプは大統領選で福音派の主張に合わせた発言をするようになった。「福音派はどこにでもいるアメリカ人で、取り込むべきだと気付き、われわれの重要な思想を学んでいったのです」とファルウェル氏は言う。結果、福音派の83%がトランプに投票したといわれる。

   慶応大の渡辺靖教授は「政治家としてはこの大票田を無視はできない」という。エルサレム首都宣言は「ロシア疑惑や差別発言でトランプ大統領の支持率は低いですから、中間選挙をにらんで、福音派をもう一度奮い立たせるためではないでしょうか。国内向けの思惑でしょう」と見る。

アラブのパレスチナ離れ見透かした「エルサレム首都宣言」

   パレスチナの現地は意外なことになっていた。「首都宣言」の直後、1000人以上の抗議デモがあったベツレヘムでは、ペンス副大統領がエルサレムを訪た21日(2018年1月)、フェイスブックで呼びかけても人が集まらず、デモは中止になった。分離壁の監視塔に石を投げる若者がわずかにいるだけだった。

   抵抗運動のリーダー、ムハンマド・マスリーさんは無力感を抱いていた。「宣言直後のデモの勢いはすぐになくなってしまった。人々は不安を抱いている。孤独です。世界に見放されたような感じです」と話す。

   80年代、アラファト議長の下で燃えたインティファーダ(民衆蜂起)の熱気はもはやない。和平は進展せず、国家樹立もならず、抗議行動に疑問を持つ人が増えているのだ。「私たちは戦い方を考え直さないといけない」

   アラブ諸国も関心を示さない。暫定自治政府のアッバス議長は「アラブ諸国では誰一人としてエルサレム問題で抗議の声を上げてくれない」と嘆く。「アラブの春」以降、アラブ諸国の政治地図も大きく変化したのだ。

   放送大学の高橋和夫教授は「閉じかけていた和平の門がさらに閉じてしまった。パレスチナの人たちは絶望感にかられていると思います。でも、アメリカもしっぺ返しを受けるでしょう。テロの激化、親米政権の不安定化で、ますます中東が見えなくなるのではないかと心配です」という。

*NHKクローズアップ現代+(2018年1月24日放送「トランプ大統領 禁断の"首都宣言"~揺れる聖地・エルサレム~」)

文   ヤンヤン
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