2024年 4月 26日 (金)

「終の住処」追い出される一人暮らし高齢者・・・賃貸住宅・アパート老朽化で取り壊し

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   東京・葛飾区に住む飯田さいさん(88)はおととし10月(2016年)、アパートの退去通知を受け取った。老朽化でとり壊すという。独身で、70歳まで働いた。退職後は年金と蓄えで生活していたが、生活保護に頼らざるをえなくなった。家賃は4万5000円。終の住処とするつもりだったが、できなくなった。

   しかし、新たな家が見つからない。食費を切り詰めても、払える家賃は5万円が限度だ。不動産店を歩いたがダメ。公営住宅を求めて区役所に行ったが、「希望者が多いんです。倍率が高い」と言われてしまった。「長生きしたのが悪かったのかなあとつくづく思っちゃう」と飯田さんは切ない。

   高度成長期に建てられたアパートや賃貸住宅が、老朽化や耐震不足、大家の都合で取り壊しや改修を迫られている。葛飾区には昭和56年以前の基準で作られた住宅は1万2000戸あり、全体の14.2%にもなる。立ち退きを迫られた人たちの相談が区に相次いでいた。

新たな家見つからず漂流

   全国の借家の数は増えてはいるが、家賃5万円以下は減少している。そのため一人暮らしや低所得者がはじき出されて「漂流」する。竜崎猛さん(80)は連帯保証人が壁だった。40代後半に横浜で営んでいた運送会社が倒産して、妻子とも別れ身寄りがない。不動産屋が恐れるのは孤立死だ。住人が死亡し、部屋の床や壁を張り替えても、保証人がいないと費用は大家の負担になる。

   「最終的には首でも吊るか」と言っていた竜崎さんは、幸い家が見つかり、立ち退き料を得て引っ越せた。

   神戸大学大学院の平山洋介教授は「立ち退きを迫られても、あわてないこと」という。「借地借家法で守られています。弁護士の無料相談制度、高齢者支援団体、借家人支援団体などの相談窓口もあります」

   日本の住宅は61.7%が持ち家で、賃貸は28%、公営住宅はわずか3.8%だ。老朽化が深刻なのは賃貸住宅だ。NHKが民間研究所に委託した分析調査では、築40年以上の賃貸集合住宅は、昨年(2017年)は7%だったが、5年後には14%、10年後には25%になる。

   平山教授「日本の住宅政策は、高度成長期は中間層の持ち家支援が中心でした。いまは低成長、高齢化、所得も落ち、条件がガラリと変わったのに、政策の転換ができていないんです。とくに低所得者向けの住宅政策が弱いですね」

   公営住宅3.8%は先進国では低い。また、政府の家賃補助制度がないのも先進国では珍しいという。

文   ヤンヤン
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