2018年 5月 25日 (金)

基地という最大の争点を隠した名護市長選 共謀罪・安保法制から続く与党の「国民だまし選挙」の総仕上げか

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   「反対しても、基地の工事は進んでしまう」という現実論が重く響く結果になった。沖縄県名護市長選(2018年2月4日投開票)は、辺野古基地反対を訴えた現職を、自民・公明の与党が推した新人候補が3000票以上の大差をつけて破った。沖縄の、それも辺野古基地の建設予定地を抱える名護市の選挙といえば、基地の是非が争点と誰しも思うが、何が勝敗を分けたのか。そこには基地問題を避ける争点隠しが露骨に行われていた。

   これはもう、なにも沖縄に限ったことではない。選挙のたびに、熱い論争になりそうな問題はクールに避けて得票を逃がさない与党陣営の常とう手段だ。巧妙なやり方がすっかり定着した選挙でもあった。

公明が推薦を決めた条件は「基地問題をはっきり言わない」

   現職の稲嶺進氏には2期8年の市政で基地反対を訴えながら、辺野古の工事を止められなかったという危機感があった。「向かい風の中、絶対にとめなければ」と。

   その市長選では、基地反対の翁長雄志知事が連日のように稲嶺氏応援に入った。知事は「辺野古基地ができ上がったら将来はない」とまで強調した。

   昨年(2917年)12月、普天間基地の米軍ヘリが隣接する小学校の校庭に窓枠を落下させる事故があった。名護市長選前の1か月で3度も米軍ヘリが県内で救急着陸した。「こんな状況をいつまでも許せない」というのが基地反対陣営の主張だ。

   新人の渡具知武豊氏は政府与党の全面的な応援を受けた。渡具知氏は長年、自民党会派の市議として基地受け入れ容認を明確にしてきたが、実はこのためにかえって自民党本部から擁立に難色を示されていた。沖縄では基地容認候補が連敗してきたからだ。

   とくに公明党県本部が長く、基地反対を少なくとも表面上は打ち出してきたことが大きかった。前回の市長選では、公明党は自主投票に回り、自民党推薦候補が4000票の大差で敗れた。

   今回、公明党県本部が渡具知氏推薦を決めるまでには水面下の調整があり、「基地移設に賛成・反対を明確にしないことにした」という。

   選挙陣営の内部文書には「NGワードは基地移設」「辺野古のへの字もいわない」とある。基地論争の土俵に上がらないことが申し合わされた。完全な争点外しだ。こうして、沖縄で「基地問題なしの選挙」「辺野古に触れない選挙」が仕組まれた。

人気の小泉新次郎氏もおかしな論理のすり替え

   自民党は二階幹事長や菅官房長官が沖縄入りして、振興策を約束して回った。もともと地元経済界にはこれまでの市政に不満があった。年間10数億円の米軍再編交付金を受け取っていない。これが8年間で100億円近くなる。渡具知氏は「受けとれる財源はすべて受けとる」と強調した。

   人気の小泉進次郎議員も2回応援に入り、「目の前の暮らしをどうするのか。基地賛否の代理戦争よりも政策論争の選挙にしよう」と呼びかけた。基地の是非を問わずに政策論争とは、おかしな論理のすり替えがあったものだ。

   有権者の思いは複雑だ。NHKの出口調査では、基地反対が52%、どちらかといえば反対と合わせて75%が基地に拒否反応を見せた。辺野古予定地の近くに住む50代男性は「大きな建設作業船を見たら、もうダメじゃないかと思う」と話し、これまではずっと基地反対派に投票してきたが、今回は渡具知氏に入れたという。「基地はもうできつつある。市長の力では止められない」

   農業以外に目立った産業がないという事情がある。どうせ基地ができるなら、「負担だけを押しつけられたらたまらない」と、せめて経済振興をという現実論が強まっていった。

   一方、名護市の中心部に住む主婦(37)はヘリの事故や不時着に「幼い子を抱えて他人事ではありません。許せない」と話した。この問題を議論した国会で自民党の松本文明・内閣府副大臣が「それで何人死んだんだ」のヤジを飛ばしたことにも驚き、「沖縄の人命を軽んじている。子どもに聞かせたくない」「いやなやり方で国は沖縄の人に決断をせまる。悔しいです」という。

   辺野古の漁師たちは漁ができなくなった今、政府から海上警備の仕事をもらう。そこに押し寄せる反対派といやでも対峙しなければならない。選挙は自民・公明がいくら争点を避けても地域に深い傷を残した。

   市長選の結果を受けて、安倍首相は「市民に感謝したい。公的に国も応援する。基地対策を進めたい」と、建設推進派が勝ちさえすれば公費も出しますよと言わぬばかりの喜びぶりだ。

   翁長知事は「国は基地に対する民意を一顧だにしなかったが、私が当選したときの民意はまだ生きている」と、一歩も引かぬ構えだ。

   この選挙が大きな節目になるのは間違いない。基地と経済振興のはざまで揺れるしかない沖縄県民・名護市民の気持ちは察するに余りある。沖縄に限って言えば、基地建設容認候補の当選という結果と、そこに流れる基地問題への複雑な思いの、どちらも事実だろう。

   同時に、全国レベルでこの選挙を考えると、争点隠しという自民・公明の巧妙な選挙手法がいよいよ確立したことがよくわかる。

   選挙では論争を避けながら、当選してしまえば国会審議の強行突破を平然とやってきた。安保法制や共謀罪法案のあのやり方に通じる。選挙が終わるまでは「NGワードは安保法制」「共謀罪法案のキョの字もいわない」ということか。名護市長選を内幕まで振り返ったとき、沖縄の切実な現状だけでなく、全国の重要選挙で繰り返される危険な側面までもが見えてくる。

※NHKクローズアップ現代+(2018年2月5日放送「密着・名護市長選~基地移設工事が進む町で~」)

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