2018年 7月 19日 (木)

<スリービルボード>
娘がレイプされ殺された母親・・・犯人探しの看板出したら村八分!胸が痛くなる小さな町の複雑な人間関係

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   女手一つで育ててきたティーンエイジャーの娘が人通りのない道路でレイプされ、焼死体でみつかった。地元警察の捜査は一通り終わったが、犯人は捕まらない。事件が風化していく中で、母ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、道路沿いに3枚の看板広告を設置した。

   「レイプされて死亡」

   「犯人逮捕はまだ?」

   「教えてウィロビー署長」

   誰の子がどの職についているかも筒抜けの小さな町で、名指しの糾弾の反響は大きかった。人格者でかつ余命いくばくもないウィロビー署長(ウッディ・ハレルソン)を責めたことで、ミルドレッドは街中を敵に回す。理不尽に娘を失ったかわいそうな母親から、がん患者の最後の心労を募らせた加害者へ。

   勤め先やかかりつけの医者、はては息子の学校の同級生からも、じわじわと責められる。陰口を叩かれているのか、叩かれている被害妄想に捕らわれているのかすらわからなくなり、前を向き続けることが辛くなる。19歳の彼女を作ってよろしくやっている元旦那の存在も、その辛さに拍車をかける。

   さらに、娘とかわした最後の会話にさいなまれる。反抗期の娘にお灸をすえるつもりで投げつけた言葉が、別れの記憶になった。あまりに残酷で救いがない。自責の念に潰されそうで、だれかに責任を押し付けようとする心の動きを看板にぶつけてしまう。

   もちろん、嫌がらせばかりではない。慮る人、静かに見守る人もいるが、その声は届かない。不幸と孤独はときに人を傲慢にする。しかし、不幸だから、孤独だからといって、傲慢が許されると思うのは当人ばかりというのがまた苦しい。

奇妙に明るいラストシーン・・・あなたはどう見るか?

   末期ガンにおかされた警察署長がとった行動が粗暴な警官をあやつり、転がる石のように事態は動いていく。小さな街の、複雑に絡み合い、抑制された人間関係の中で、彼らが見せる汚さも誠実も、どちらも本当だからこそ胸が痛い。ただ、弱くて、過ちをおかしがちで、それでも目の前の事実にふと誠実になれる瞬間もある。

   言葉に出して謝るわけでないけれど、ラストシーンでは互いに互いを傷つけたことを赦しあい、隣のシートに腰掛け、目的地へと向かう。車内の空気は、ご都合主義でもなく、お涙ちょうだいでもない。受け入れて生きていく強さと、受け入れて生きていかねばならないやるせなさ。奇妙に明るいやりとりが胸に迫る。

   後味は良くない、救いはあるようでない。ないようである。どちらとも言えるエンディングの、締め付けるような辛さまでふくめ、誠実な人間ドラマを観た感覚が残った。(ばんぶぅ)

おススメ度☆☆☆☆

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