2018年 5月 22日 (火)

<羊の木>
過疎村に移住させられた仮釈放の殺人犯6人!住民から注がれる険しいまなざし・・・やがて起こる"死亡事件"

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C2018『羊の木』製作委員会 ?山上たつひこ、いがらしみきお/講談社
C2018『羊の木』製作委員会 ?山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

   「がきデカ」の山上たつひこ原作、「ぼのぼの」のいがらしみきお作画の漫画の実写映画で、「桐島、部活やめるってよ」「紙の月」の吉田大八がメガホンを取った。脚本の香川まさひこは吉田監督とは「クヒオ大佐」以来のタッグとなる。

   活気がない港町・魚深に互いに見知らぬ6人の男女が移住目的でやってきた。市役所職員の月末(錦戸亮)は彼らの受け入れを命じられる。月末はやがてこの受け入れが、過疎化問題の解決のための国家の極秘プロジェクトだということを知り、さらに全員が仮釈放された殺人犯だと知る。

   住人たちから懐疑の目向けられ、港で起きた死亡事故をきっかけに、住人と6人の運命が交錯し、小さな町の日常の歯車は少しずつ狂い始めていく。

思い込みと現実のズレ

   北村一輝、優香、市川実日子、水澤伸吾、田中泯、松田龍平といった多彩な役者陣たちが、互いにぶつかることなく物語の中で成立しており、吉田監督は役者の撮り方、見せ方が巧いとつくづく感じさせる。

   月末は受刑者を駅に出迎え、それぞれにまったく同じ言葉をかける。返ってくる言葉は6人で違う。一人ひとりの内面が垣間見え、ゾクゾクさせられる場面だ。説明過多にならず、物語の進行と並行してさらりと伝えていく演出の巧みさは脱帽するしかない。

   主演の錦戸亮の仕事にも拍手を送りたい。「羊の木」とは、かつてイギリスで木綿から羊が取れると信じられていた迷信がモチーフとなっており、人間の思い込みの純粋性と危うさに対するメタファーに違いない。羊は受刑者たちであり、それに相反するのが月末になる。

   月末の「末」を反転させると「羊」にどことなく似ており、月末は彼らと対照的な存在として、つまり観客に近い人物として存在しているが、錦戸は「異常者を際立たせる常人」として物語の狂言回しとなり、作品が持つ潜在的なサスペンス要素を際立たせている。

満期受刑者の6人に1人が「再犯」

   当たり前のように接していた人が過去に犯罪を犯していたことを知っていたら、どうなるだろうか。前科は伝えるべきなのか、隠すべきなのか。前科を持つ人間はどのように生きて行けばいいのか。

   殺人事件の満期受刑者のうち6人に1人が再び犯罪に走るのは、塀の外に居場所がなく、再出発を果たせぬ現実があるからに違いない。小さな港町・魚深は受刑者たちが行きついた果てなのか、再出発の象徴なのか。大きな問題を投げかけているように波音は続いている。

丸輪 太郎

オススメ度☆☆☆☆

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