2024年 4月 25日 (木)

過労死寸前の医師と教師 「患者や子供のために」と際限なく膨れ上がった仕事を使命感だけに任せていいのか

不審者、問題児の校区巡回で昼食が2分の教師も

   生徒500人がいる大阪市立東中では、働き方改革への理解を求める通知文を保護者に送った。所定労働時間は午前8時半から午後5時だが、多くの教師が朝7時すぎには出勤し、7時40分から校区を巡回する。警察から不審者情報、地域の人からは生徒のマナー違反の声が寄せられるので放置できない。問題が起こりやすい休み時間にも校内を見回る。「職員室にずっといることができない」という。昼食を2分ですませることもあるそうだ。

   部活の指導は、土日をふくむ勤務時間外に行う。教師全員がどこかの部活の顧問をしている。こうして、授業の準備を始めるのは夕方にやっと。それも役所に提出する文書作りにあてることもあり、校内の会議が開けるのは夜になる。会議後に必要なら関係生徒の保護者に連絡しなければならない。結局、授業準備は自宅へ持ち帰る教師がザラだ。

   教師たちからは「ゆっくりとノートを見る余裕が欲しい」「休めば、生徒にしわ寄せがいく」と悲鳴に近い声がもれる。

   大阪市教委は、夜間の電話対応を自動音声に切り換え、外部からの部活の指導員の支援も検討しているが、それでどこまで改善されるかは未知数だ。

   時間管理がなじまない教師には、残業手当の代わりに月給の4%が支給されるが、それで時間は買えない。

   元公立中学校長の藤原和博さんは「生徒指導までが日本では教師の仕事です。給食の食べ方や部活もそうで、事務量が増えていく」と語る。中でも部活は外部化すればいいというものでは必ずしもないが、教師の35%が50歳代の今、すでに外部の力を借りなければ、体力的にもたない状態だ。藤原さんは「とくに土曜にサポートしてくれる人が欲しい」という。

   教育も医療も、労働時間だけでなく、それぞれの内容に立ち入って対応・変えていかなければ、どちらも崩壊しかねない過酷労働の実情にすでにある。現実は、「ノー残業デー」や「プレミアムフライデー」のはしゃいだ掛け声とはかけ離れた世界にしか思えない。働き方改革と現場の質の維持、どうバランスをとりながら改革していけばいいか、問題がつきつけられている。

   ※NHKクローズアップ現代+(2018年4月16日放送「病院・学校にも影響が シリーズ働き方改革 残業80時間超現場に密着」)

   

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