2019年 11月 20日 (水)

<ラブレス>
ある家族の救いようのない「愛の喪失」自分しか愛せない夫婦の無残

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(C)2017 NON-STOP PRODUCTIONS - WHY NOT PRODUCTIONS
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   12歳の少年アレクセイは学校が終わっても家に帰りたがらず、一人で町から外れた川沿いの森林を歩いている。アレクセイの母ジェーニャと父ボリスは、それぞれ新しい恋人がいて、離婚の話し合いをしている。どちらもアレクセイを引き取りたがらず、自分の再出発だけを考えている。

   アレクセイが失踪しても警察はまともに取り合わず、ボランティア団体に捜索を依頼するが見つからない。

   2018年アカデミー賞外国語映画ノミネート作品で、「父、帰る」「裁かれるは善人のみ」で知られるロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ監督が、ソ連解体後のロシアの実像を、1組の家族を通して寓話的に描いている。

息子が失踪しても母親は「最初から子どもなんか欲しくなかった」

   物語は徹底的かつ無慈悲に家族の悲劇を描いていく。「Loveless(愛の喪失)」という英題を邦題で「ラブレス」としたのは、筆者は愚行であると感じるが、この救いのない物語に対する救いを求めているのだろう。それぐらいに物語に救いがない。

   母ジェーニャは他人がいる前で平気で息子を殴り、誰といても自撮りに夢中で、結婚しても、不倫をしていても、現状を抜け出すための新たな出会いを求めている。これは、SNS社会が作り上げた「自己愛」の膨張の象徴であり、ロシアの物質的近代化と倫理道徳の後退の象徴なのだろう。

   自己愛の膨張は他者への愛情の欠如につながり、ジェーニャは息子が行方不明になっても、心配するどころか、「そもそも結婚なんてしたくなかった」「子供なんて最初から作らなければよかった」と夫に暴言を吐くことしかできない。夫はそれを聞いても一切感情的にならず、無表情だ。

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