大震災の経験なぜ生きなかった?大阪北部地震でもエレベーター閉じ込め、道路マヒ、駅大混乱・・・
最大震度6弱の地震に襲われた大阪北部は、いまだにライフラインが復旧しない。これほど防災がいわれながら、都市機能はたちまち奪われていった。
【エレベーター閉じ込め】地震発生とともにエレベーター内に長時間閉じ込められた人は、関西5府県で300件を超えた。会社のエレベーターに閉じ込められた女性は外と連絡は取れたが、業者の車は渋滞に巻き込まれ、到着したのは6時間半もたってからだった。
「怖いということと、緊急車両のサイレンとヘリコプターの音しか聞こえず、周りがどういう状況かまったく把握できずにいました。」と語った。
【道路マヒ】地震発生から2時間たった午前9時、大阪市内の道路が大渋滞となった。市内中心部で営業するタクシー会社の車両280台に取り付けたGPSが、かつてない道路状況を伝えてきた。「渋滞というより、どこもかしこもまったく動いていないんですよ」
通行可能になった高速道路から、たくさん車が一般道路にあふれだしたからだった。
【駅大混乱】午後1時、新大阪駅は人があふれた。東海道新幹線が午後12時50分に運転再開され、到着した新幹線から大勢の乗客が下車したのが始まりだった。接続する地下鉄、在来線はまだ全面ストップしていたため降りた客は移動の足がなく、タクシー乗り場に殺到し長蛇の列ができた。そのタクシーも道路渋滞のためになかなかこない。いよいよ構内に人が滞留し、利用客は徒歩で家に向かうしかなかった。
刻々変貌する都市に対応追い付けない防災
武田真一キャスター「都市で災害が起きると、さまざまなことが連鎖しあって大混乱が広がる事態が、今回の地震で明らかになりました」
都市災害が専門の関西大の河田恵昭・特命教授はこう分析した。「23年前の阪神淡路大震災(1995年1月17日)でも神戸が大きな被害を受けましたが、都市はどんどん変化しています。同じ規模の地震が起きても、そこから出る被害は変化すると考えなければいけないんですね。
過去の教訓はそのままでは生かされません。常時、変化するという前提で、今回発生した被害内容を精査し、少なくするにはどうするか、わが事として考えていくしかないんです」
武田「阪神淡路、東日本大震災を経て、さまざまな想定をしてきたはずなのに、なぜ十分な対応ができなかったのでしょうか」
河田教授「それはですね、基本的に、自分の身に降りかかって来るとは考えていなかったということですよ」
その典型的が、高槻市・寿栄小学校のブロック塀の倒壊だ。登校中だった4年生の三宅璃奈さん(9)が下敷きになり命を奪われた。地震でブロック塀が倒壊して多くの死者がでていたのを受け、国は1981年に建築基準法を改正してブロック塀の規制を強化した。しかし、この学校ではまったく守られていなかった。
事故後に高槻市教育委員会は建築基準法に違反していたことを認めたが、「どのような経緯で塀が使用されていたか、法律に基づいた定期点検が行われていたか不明」と他人事だった。
河田教授は「違反しても罰則規定がなく、持ち主も、関係にない人の命を落とすことに繋がるという深刻さがないですね。罰則規定を設け、自治体が補助をつけるなど推進するようにしてほしい」と指摘する。
*NHKクローズアップ現代+(2018年6月20日放送「"都市直下地震"露(あら)わになったリスク~大阪震度6弱で何が~」)