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日朝首脳会談の邪魔になりだした「対北イージス・アショア」日本周辺情勢は大きく変化

   安部内閣は昨年12月(2017年)、敵の弾道ミサイルを大気圏外で迎え撃つ「イージス・アショア」をアメリカから2基購入することを決めた。秋田と山口を配備候補地に、2023年運用開始を目指すとした。ところが、米朝首脳会談で日本周辺の情勢が大きく変化し、緊張が和らいだことから、「配備を急ぐ必要はあるのか」など議論が巻き起こっている。

   イージス・アショアの配備には、高性能レーダーと発射装置合わせ1基1000億円、迎撃撃ミサイル1発数十億円のほかに、敷地の造成費、関連施設建設、運用後のシステムの更新など、現状では費用がいくらかかるか計算できず、相当膨らむ可能性があるとみられている。

   イージス・アショアは必要なのか。海上自衛隊の元自衛艦司令官の香田洋三氏は次のように答えた。「弾道弾防衛の能力があるのがイージス鑑とPAC3なのですが、イージス艦は弾道ミサイル防衛のためだけに作られているわけではなく、60日以上、現場にいるということも乗員の負担が高いんです。

   PAC3は主要な戦略拠点のミサイル防衛、あるいは攻撃されそうな所への機動展開するためのもので、1日24時間、365日、陸上においてしっかり警戒態勢がとれます」

自民党内からも「配備見直せ」

   安倍首相が北朝鮮のミサイル発射を「国難」と叫び、巨額な費用や配備の必要性について広く議論することがなく導入を急いだため、配備候補地の反発も強い。

   秋田市で候補地周辺の住民代表ら120人が参加して行われた住民説明会では、「候補地(新屋演習場)は住宅街から近すぎる」などの懸念の声があがった。「わが町は、イージス・アショアが来る自衛隊演習場から、近い所で300~400メートル。住宅密集地です」と訴えた。新屋演習場に隣接して小中高校もある。

   強力な電磁波に対する不安も大きい。「365日、常に電波を発している。副作用が起きないということは考えられない」という声が上がったが、防衛省の説明は「基本的には皆さんの人体に影響はないと考えている」と説得力がない。

   有事の際に敵の攻撃の対象になることはないのか。これにも防衛省は「抑止力が高まることによって、わが国が攻撃される可能性は低くなる」と、答えになっていない。

   武田真一キャスター「正面から答えていないように見えますね」

    喜多記者「住宅地との距離をどう考慮するか、配備を正式に決める際のポイントになります」

   米朝首脳会談を受けて、安倍首相は日朝首脳会談の可能性を探っている。そんなときに、北朝鮮からの攻撃を想定したイージス・アショアの配備を急ぐ必要があるのか。自民党内からも配備を見直せという声が出ている。当然だろう。

モンブラン

NHKクローズアップ現代+(2018年7月4日放送「揺れるミサイル防衛"イージス・アショア"」)