2018年 9月 20日 (木)

<審判>
氾濫する情報に振り回され自分を見失ってしまったわれわれ・・・カフカで描く現代の不条理

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   イギリス出身で日本在住30年の映画監督ジョン・ウィリアムズがフランツ・カフカの同名小説を映画にした。

   銀行員の木村陽介は30歳の誕生日の朝、自宅で目覚めると、部屋に二人の男が立っており、木村を「逮捕」すると告げ、罪状は「不明」だと言う。小学校の体育館に簡単な机が並べられていて、それが「裁判所」らしい。裁判官の後ろでは、女性が洗濯物をしている。不条理に満ちた「審判」が、無罪を主張する木村を出口のない迷宮に追い込んでいく。

真実の仮面かぶった嘘

   1963年の「審判」(オーソン・ウェルズ監督、アンソニー・パーキンス主演)、1992年の「トライアル 審判」(デイヴィッド・ジョーンズ監督、カイル・マクラクラン主演)と、カフカの「審判」はこれまでにも映画化されてきたが、今回は舞台が東京になっている。

   登場人物にはとにかく感情がない。木村と挨拶すら交わしたことがない隣人が、木村が逮捕されるとなると興味を示すシーンなどに象徴的に描かれているように、形式に敏感で、中身はない。

   監督は「情報」という実態に肉薄するためにカフカを選び、東京を選んだのかもしれない。SNS社会がもたらす多様化したメディアは、急速に情報が拡散されるが、その真意や信憑性に信頼はなく、時に「嘘」が「真実」の仮面を被り、人間の判断や行動に影響を与えてしまう。

   週刊誌化された社会の危うさを描くことにより、不条理とは明確な真実の元から派生する概念だということの再認識を迫る。

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