2019年 10月 14日 (月)

オウム死刑囚たち執行直前の手紙「どうすればよかったのか、今でもわかりません」

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   オウム真理教事件の死刑囚6人の刑の執行が26日(2018年7月)に行われ、6日の7人と合わせ13人全員が執行された。NHKは死刑囚と20年にわたって手紙のやり取りを続けてきた。彼らが罪を悔い、死に臨む心境が読み取れる。しかし、どうしてあのような凶行に走ったのか。謎が残る。

   麻原彰晃(本名・松本智津夫)の音声が残っている。「オウムは反社会、反国家である。ドブ川で美しく咲く蓮華のようにあり続けるためには、反社会でなければならない」

   死刑囚はこれに心酔し、麻原を神と崇めていた。地下鉄サリン事件の実行犯のひとり、林泰男の最後の手紙には「なぜ事件は起こされたのか。どうすれば起こさずに済んだのだろうか、と言った類の問いに対しては、どのような答えにも、私自身納得することができない」とあった。

   20年経っても見つからない答え。キャスターの武田真一は「事件の闇の深さを感じざるをえません」という。

「殺人という常識的なイメージが浮かばなかった」

   坂本弁護士一家殺害事件の実行犯のひとり、岡崎一明は営業マンだった。売上至上主義に嫌気がさしていたとき、オウム神仙の会というヨガサークルで麻原と出会う。「仕事で嘘をついてものを売ったり汚れた人間です」と打ち明けた岡崎に、麻原は「そう思った時点から、あなたの罪は消えている」と言った。「大きな包容力にびっくりした。修行者然とした有様に圧倒された」

   岡崎は入信し、組織拡大の教団PR本の販売を担う。そのころ、教団の強引な信者獲得に批判が出ていた。麻原は教団に都合の悪い人の命を絶つことは「救済」になると言い出す。麻原こう話している。「Aさんを殺した。人間界の人たちが見たら単なる殺人、殺生です。しかし『ヴァジラヤーナ』の考えが背景にあるならば、これは立派な『ポア』(救済)です」

   平成元年11月、岡崎は信者を家族へ戻す活動をしていた坂本堤弁護士の殺害を命じられた。岡崎は書く。「夫妻の首を絞めて殺害。1才になったばかりの龍彦ちゃんの鼻と口を塞いで窒息死させました。はたから見ると現実感がないと思われるでしょう。でも私たちは真剣でした。判断力をなくした人形でした」

   広瀬健一は早稲田大理工学部で物理学を専攻し、大学院を卒業前に出家した。動機は自分が学ん出いる科学への疑問だった。家電製品の値引き販売を見た。価値がなくなるのは虚しいと感じた。バブル全盛に違和感を持つ若者を、麻原は巧みに引き入れていた。

   「当初、教義を確認しながら進んでいる感覚だった。入信直後なら、違法行為を受容しなかったと思います」と広瀬は書いた。しかし、1日に16時間もの修行の中で、麻原には特別な力があると信じるようになった。「神である彼の言葉は、絶対的な意味を持っていたのです」

   そして平成7年3月20日、地下鉄サリン事件の実行犯のひとりになった。「救済としか思わなかった。殺人という常識的なイメージが浮かばなかったのです」

   逮捕されても麻原を信じていた。目が覚めたのは、裁判が始まり、麻原の意味不明の言動を見てからだ。「自己の愚かさが身にしみました」「私どもが殺傷したのは社会で誠実に生きてこられた方々ばかりでした。悔やんでも悔やみきれない思いです」

江川紹子さん「オウムの最大の教訓は人間の心は脆いものということ」

   事件を取材しているジャーナリストの江川紹子さんは、刑の執行について「弟子の12人はカルトの生き証人でした。これら真面目な人たちが、どうしてこんな団体に心を奪われたのか、人殺しにまで従ったのか。刑事裁判とは異なるアプローチで解明すべきでした」と指摘する。

   心理の専門家が死刑囚への面談を求めたが、法務省は認めなかった。江川さんは「専門家がアプローチすれば、教訓も得られたと思う。残念です」という。さらに、「心の悩みという難しい問題にオウムはスパッと回答を与えた。オウムの最大の教訓は、人間の心は案外脆いものだということ。今でも悩む人はカルト性の高い所に引き寄せられる可能性はある」と心配する。

   *NHKクローズアップ現代+(2018年7月26日放送「オウム死刑囚"最期の手紙"」)

文   ヤンヤン
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