2024年 4月 20日 (土)

わが子のいじめ自殺の真実を隠す学校と教育委員会 第三者委員会は本当に遺族の希望をかなえられるか?

「遺族が気の毒だから」と聞き取りをしないで調査になるのか!

   【青森の事件】2016年8月、青森県の中学2年生、葛西りまさん(当時13)が電車に飛び込んで死亡した。スマホに「ストレスでもう生きていけません。二度といじめたりしないでください」とあった。この事件には第三者委員会が設けられた。

   第三者委員会は全校生徒にアンケートを実施し、100人近い生徒から聞き取りをし、SNSの記録も調べた。しかし、りまさんの父親・剛さんは報告書の原案を見せられ、愕然とした。「思春期うつ」と書かれていた。根拠を求めたが、納得できる説明はなかった。「本人に会ったことも、診察したこともない人がうつと決めつけることが許されるのか。二度殺された思いです」という。

   第三者委員会の委員長を務めた大学教授、櫛引素夫さんは今、「委員は初めての経験で手さぐりだった」と明かす。「遺族に寄り添っていなかった」とも語ったが、だとしたら、これで事実をまともに調べられるのか。オソマツすぎる。「調査」は今も続いている。

   いじめ自殺事件が起こるたびに第三者委員会が設けられるようになった。大学教授、弁護士、医師といった「専門家の調査」がうたい文句だが、調査能力がなく機能不全に陥っている委員会もあるらしい。現在、全国でいじめ自殺の第三者委員会が69件あるが、うち13件で遺族から委員の交代や調査のやり直しが求められている。

   NHKが全国の委員にアンケートしたところ、98人から回答があった。「(調査の)強制力がない」「非協力的な関係者がいる」などの問題が指摘される一方で、こんな実態も浮かび上がった。

   委員の1人が遺族から聞き取り調査をしようとすると、他の委員が「それをしたら遺族が気の毒すぎる」と反対し、実現しなかった。この反対委員は遺族に触らないことが善意だと思ったのだろうか。本心だっだら、とんでもない考え違いだ。

   神戸や青森のケースでは、真実を知りたいという遺族の願いに、自分勝手な価値観と「善意」がフタをしてしまった。こういう「専門家」に事実調査ができるわけはなく、委員に選ぶこと自体がもはや有害でしかない。

   教育評論家の尾木直樹氏は「遺族からの聞き取りは当然で、具体的な調査が必要」、弁護士の横山巌氏は「遺族との信頼関係があれば納得してもらえる」と指摘する。

   いじめ自殺の再発防止には、まず事実を正確に調べて、対策を講じるしかない。その調査段階で隠蔽工作や偽善の押し売り行為が横行していた。

   ことをあいまいにすませず、いじめ発生前後の当事者や指導者の責任まではっきりさせなければいけない。必要なら刑事責任も問う。「かわいそう」「気の毒」と言うだけでは何も改善されない。

   ※NHKクローズアップ現代+(2018年7月30日放送「『いじめ自殺』遠い真相解明 ~検証第三者委員会~」)

   

   文・あっちゃん

姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中