2019年 1月 17日 (木)

〈皇帝ペンギン ただいま〉
「必ず帰ってくる」と100キロの陸路を歩き海へ 圧巻の映像に命の営みを見る

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マイナス40度の大雪原を子育てをする皇帝ペンギン((C)BONNE PIOCHE CINEMA-PAPRIKA FILMS-2016-Photo:(C)Daisy Gilardini)
マイナス40度の大雪原を子育てをする皇帝ペンギン((C)BONNE PIOCHE CINEMA-PAPRIKA FILMS-2016-Photo:(C)Daisy Gilardini)

   映像美だけでお釣りが来る。一面の銀世界、という言葉のもつ静謐さが覆される過酷な吹雪と、その中で微動たりもしないひとかたまりの黒。疲れ果て、薄汚れて、背中の骨の線も、毛並みの一本一本までがやせ細って見える。そんな冬を乗り越えた、ある皇帝ペンギンのカップルの、求愛からヒナの誕生、そして巣立ちまでを追ったドキュメンタリーである。最新鋭の4Kカメラに加え、ドローンも使った映像は、寄り、引き、どちらも圧巻の迫力だ。

   南極の冬を乗り切るため、海から遠く離れた安全地帯「オアノック」へと行進する皇帝ペンギンの群れ。カメラは1羽のオスに注目する。ナレーターの草刈正雄が何度も「経験豊富な父親」と説明するこのオスが、全編の主人公だ。長く生き、これが最後の越冬、最後の営巣になるという彼は、冬を迎える直前にオアノックへたどり着いた。

   見渡す限りのペンギンの群れは、引きで映すと、本当に「人間の群集」「雑踏」に見える。灰色、オリーブ、グリーン、チャコールグレーのコートの紳士淑女が散らばる中、一組のオスとメスがダンスを踊る。求愛のダンスは、パートナーシップの確認と、互いを互いとして認め合うための儀式である。だからこそ、リズムを合わせる作業は念入りに続くのだ。

オスとメスが交代で絶食してヒナを守る

   卵が産まれると、メスからオスへすぐに受け渡される。極寒の氷に卵が20秒以上接触すると、命がついえる。ヨチヨチした二本の足と、長くない嘴で、あたたかな毛皮のコートをめくり、孵化に適したポジションに卵をセットするのは、速さと正確さが求められる作業だ。そして2か月もの間、足の上の卵を抱える生活が待っている。気温はマイナス40度。絶食し、水だけを飲む。もちろん、体力の限界を迎え、オスが卵を手放すケースも多い。

   ヒナが孵化すると、メスとオスが交代で、ヒナの世話と食料の調達を分担して育児を行う。子育てのホームとなるオアノックは見渡す限り、」何万羽ものヒナと親鳥の皇帝ペンギンが集う、大規模避難所の様相を呈する。オアノックから出て数十~百キロの陸地を歩み、海に到達。食料の魚をお腹いっぱいに詰め込み、また陸路を戻ってくるには数週間がかかる。ヒナの世話をする側は、何も食べずに伴侶の帰りを待つ。

   過酷な親の状況もわからず、食べ物をねだり、ふわふわと駆け回る灰色の毛玉たちの無垢さと愛らしさ。自分を置いてハンティングに行く親を後追いするヒナもいる。小さな足を懸命に前に出し、丸々と太った体を揺らし、つやつやと濡れた黒い目で世界を見上げる。生きることしか見えていないまぶしさがある。

   圧巻だったのは、水深100メートルで撮影したという、魚を追う映像。愛らしい、どこかイワシフライのようなとぼけた図体が、流線形のかたまりになり、自在に深い海を割く。賛否両論がありそうな、全編に「愛」と「親子の絆」を強調するストーリーについては、コメントを差し控えたい。これらの行動が家族愛なのか、本能なのかを、撮影者の人間がジャッジすることはできない、というのが個人的な見解だ。

(ばんぶぅ)

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