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)作った半分が売れ残るアパレル!消費者の選択厳しくなってるのにいまだ海外で大量生産

   新品の衣類に「9割引」の札ももはや珍しくない。2017年の余剰在庫が過去最高の14億点になったという。作られたのは28億点だから、半分が売れ残りということだ。これらが安値で再販されるならまだしも、焼却処分までされていた。

   大阪の在庫処分専門業者「Shoichi」には約500のメーカーやショップから、年間500万点の売れ残りが持ち込まれる。業者はこれを格安で再販するが、ブランドのタグは切り取る。ブランドの価値の低下を避けるためだ。

   「クローズアップ現代+」が取材中に、あるアパレルメーカーが冬物のコート2000点を持ち込んできた。1度も店頭に並ばなかった新品で、定価は8000円から1万7000円だが、メーカーの担当者は「一律で1500円」という。交渉の末、合計300万円で決まった。生産コストは900万円だから600万円の赤字だが、担当者は「売れ残りは、早めの見切りが不可欠。置いているだけで倉庫代がかかる」と話す。

   東京都内の産業廃棄物処理施設では、複数のメーカーから運び込まれる年間200トンを焼却処分していた。1社あたり10トントラック数台分だ。焼却にはメーカー側が立ち会うことが多い。ブランド品が他へ流れていないことを確認するためだ。

あのバーバリーでも42億円分を焼却処分

   なぜこれほど売れ残るのか。経営コンサルタントの河合拓さんは構造的な問題だという。バブルがはじけた90年代、メーカーは中国など海外に生産拠点を移し、安い単価で大量生産に舵を切った。

   「この時期は売れました。15兆円も。それがいまは10.4兆円になったのに、同じやり方が続いています。これが最大の問題です」という。その後、2000年前後のファストファッショッン、さらに低価格の新規ブランドの立ち上げが続き、業界は作り過ぎが常態化した。

   アパレルは企画から販売までに半年から1年かかる。かつては春夏秋冬の4シーズンだったものが、いまは8シーズンとサイクルが短くなって、ますます先が読めなくなった。ハズレは即ち在庫につながる。

   海外でもこの夏、余剰在庫騒動があった。有名ブランドのバーバリーが42億円分を焼却処分したと発表したのだ。たちまちネットで「ばかげた決断だ」などと批判を受け、焼却を撤回したが、在庫をどうするかは検討中という。

   タレントでアパレル会社を経営する川崎希はこう話した。「私の会社では、日本で少量ずつ洋服を作っているので、あまり在庫が余るということはないんですけれど、海外で作ると、やっぱり大量ではないと作ってもらえないので、在庫が余ってしまうということは、やっぱりあるんだと思いますね」

   河合さん「いまアパレルは、ブランド間の差がそんなに消費者から見てないんですね。川崎さんのブランドは、ブランドが強いんだと思うんですね」

バーチャル・AIで「商品置かない店」自分だけの1着を選ぶ

   新しい動きもある。「セーレン」は創業129年の老舗が3年前に立ち上げたブランドだ。お洒落な広々とした店舗に商品は並んでいない。試着はバーチャルでする。客をカメラで撮影して、客はデザイン、型、色など47万通りから自分だけの1着を選ぶ。サイズもぴったりのオーダーメイドだ。鎌倉千秋キャスターが体験したら、何着ものドレスを即座に着せてくれた。

   注文を受けてから作るから無駄がない。「在庫レスです」と川田達男会長はいう。工程も3週間に短縮。「少なくとも来週のデートに間に合うよう挑戦している」のだと話す。

   AIでの挑戦もある。「ファッションポケット」は、ネットやSNSで公開されているモデル、有名人から一般人のファッション写真500万枚を収集・分析して、高い精度でトレンドを予測している。重松路威代表は「これによって、廃棄、値引きを縮減することができる」という。

   ちなみに、同社のコンピューターがはじき出したこの秋冬のトレンドは、「チェック」と「ドット(水玉)」だったが、この日の鎌倉キャスターのワンピースはドット、川崎さんはチェックだった。

   *NHKクローズアップ現代+(2018年9月13日放送「新品の服を焼却!売れ残り14億点の舞台裏」)