2019年 1月 19日 (土)

<日日是好日(にちにちこれこうじつ)>
樹木希林の穏やかな佇まいに感銘!茶道は人生なのか...決まりごとの向こうに見えてくる自由な自分

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(C)2018「日日是好日」製作委員会

   森下典子の自伝エッセイ『日日是好日~「お茶」が教えてくれた15のしあわせ~』の映画化である。監督は大森立嗣、主演を黒木華、お茶の先生を先日亡くなった樹木希林が演じている。

   1970年代、20歳の大学生の典子(黒木華)の日常から始まる。夕食後の一家団らんの中、近所に住む武田先生(樹木希林)に茶道を教わったらどうかと母が提案してきた。せっかく習い事するなら、フラメンコやイタリア語のような華やかなものがいいと思う典子なのに、たまたま遊びに来ていた従姉妹の美智子(多部未華子)はなんだか乗り気である。

   慎重な性格の典子に対し、美智子には興味があることにひょいと飛び込める無邪気な好奇心があった。美智子と一緒にやるならいいかと、週に1回の茶道のお稽古が始まった。

   数十種類にも及ぶ茶道具や茶菓子、掛け軸などの説明や、茶道での細かすぎる作法(1畳を6歩で歩くことや、水は釜の中程、お湯は底からすくうことなど)に興味をそそられながらも、右往左往する典子と美智子らを通じ、観客も茶室という静ひつで非日常の空間に自然と浸かっていく。

   そう、描かれていくのは「茶道」という日本の伝統文化で、とてつもなく地味な映画である。教室内でラブストーリーが展開されるわけでもなく、「Shall we Dance?」や「ちはやふる」のように目指すべき大会があるわけでもない。ただひたすら、週に1回のお茶のお稽古に24年通い続けた女性の話である。

気が付くとこちらも茶室にいる気持ちに

   24年の中で、美智子が商社に就職し、典子は就活に失敗。美智子の結婚、典子の失恋・・・いろいろあっても、茶室の中だけは変わらない。この映画では色恋や仕事、はたまた人の死など、人生の転機となる出来事は茶室の中の「静」を際立たせる布石として描かれる。あくまで中心に据えられるのは動きのない茶室だ。この徹底した「静」への執着が、終盤に花開く。

   ある大雨の中での稽古中、日本家屋を容赦なく打ちつける雨の音が途切れる。典子のある発見と観客の発見が重なる、無音の中の息の詰まる一瞬。これこそが茶道と映画が共鳴した究極の映画体験だ。茶室がすべてを受け入れてくれるように、この映画もすべてを受け入れてくれるようなやさしさにあふれていた。

   映画館を出ると雄弁にこの映画について思いを巡らせている自分がいる。まさにこの映画の主人公が、稽古終わりに雄弁になるように。映画館が茶室となり、非日常空間からかけがえのない「今」が流れている現実世界に解き放たれた感覚を味わった。紛れもなく映画館で観るべき映画だ。

シャーク野崎

おすすめ度☆☆☆☆

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