2019年 1月 23日 (水)

スコッチを越え世界で大ブレイク! ジャパニーズ・ウイスキーの人気の秘密

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   国産ウイスキーの快進撃が続いている。ここ数年、ヨーロッパ産をおさえて世界のコンクールで優勝しているのだ。ビンテージものの価格はかつての2~3万円から35~40万円と高騰した。8月(2018年)のオークションでは3800万円の値がついたこともある。外国人富裕層に人気なのだが、「日本が日本がスコッチを越え、世界のリーダーになった」と報じた海外メディアもある。なぜ、これほどの高い評価を得られたのか。

   一つは、原酒の豊富さだ。

   ウイスキーの原酒は麦芽などと水をまぜ、発酵させて蒸留し、樽に数年以上眠らせてつくる。ちがった個性を持つ原酒をいくつもブレンドし、初めて製品ができるため、原酒の在庫が生命線だ。500年を超す歴史があるウイスキーの本場スコットランドに対して、大正から昭和初期にスタートした日本には原酒の確保に大きな壁があった。

日本の四季の豊かさが生んだ原酒のまろやかさ

   スコットランドには100か所を超す蒸留所があり、原酒を交換し合うが、日本ではメーカーが少なく、ライバル意識が先に立ってきた。それだけに自前で工夫を重ねた。石炭直火で加熱することでコクと香ばしさを出した。樽作りにもこだわった。欧米ではほとんどナラの一種のオーク材だが、日本はミズナラや杉も加え、ワインや梅酒の樽も活用する。こうして数千種の多種多様な原酒作りに成功した。

   日本の風土も活かした。

   スコットランドより南にある日本は、ウイスキー作りには不向きといわれていたが、埼玉・秩父の小さな蒸留所がその常識を覆した。ポイントは樽に入れた原酒の蒸発率にある。

   寒暖差の変化により呼吸するように伸縮する樽から、原酒がわずかずつ蒸発する。これを「天使のわけまえ」と呼び、「蒸発分をけちるとおいしくできない」といわれる。この蒸発率がスコットランドは年2%なのに、日本では寒暖差が大きいため5%近くになり、短い期間でまろやかな原酒を生み出すことに成功した。より自然に近い状態でと、蒸留所はコンクリートの床をやめ、地熱や湿気が伝わりやすくするよう工夫した。

   世界的な賞をいくつも獲得したベンチャーウイスキーの肥土伊知郎社長は「日本のメリハリのある四季の変化が味わいを作った」と考えている。

   日本のウイスキー誕生を小説にまとめた作家の伊集院静さんは「すばらしい。スコットランドにはないコクを出せた。日本人でないとできない面がある」という。

   そういう日本のウイスキーは長らく「冬の時代」があった。

   1980年代後半からビールや酎ハイに押され、アルコール度の強い酒は敬遠された。その間も原酒を仕込んでから製品として売れるのは5年先、10年先だから、在庫が増え続けた。サントリーの山崎工場長だった嶋谷幸雄さんは「一番つらい時代でしたが、秘策はなかった。愚鈍なまでに腕を磨けば客は戻ると信じました」という。

若手社員のアイデアが大ヒット商品「ハイボール」を生んだ

   消費減退がとまらないまま25年、ウイスキー好きで入社した若手社員たちが立ち上がった。「復活させなければ」と連日、居酒屋に通い、ビールや酎ハイを飲む若者たちを観察した。

   「ウイスキーもあんなふうに」と目をつけたのが、ソーダを使うハイボールだ。レモンを皮ごと入れて爽快感を出すことにもこだわった。乾杯しやすい、これはいける。

   しかし、社内の会議は紛糾した。「レモンで味を作るのか」「品格に関わる」という抵抗。それでも、若手社員たちはあきらめず、ハイボール専用のサーバーやジョッキをつくった。普通に企画書を通すのはむずかしいので、試飲会に一般女性をまぎれ込ませた。そのひとこと「飲みやすくておいしいですよ」に参加者がグラッときたそうだ。

   全国展開すると、またたく間に居酒屋の定番になり、売り上げは上昇に転じた。今ではハイボールからウイスキー消費のすそ野が広がりつつあり、アジアにもファンが増え、ストレート主流の欧米でも伸び始めたという。

   伊集院さんは「もの作りはいつも、老若がぶつからなければダメ。誰かがやってみなはれと言ったら、あとは忍耐力だ。改良にカネと時間をかけた」と振り返った。

   日本のもの作り精神がIT時代でも立派に通用することを、ウイスキーをめぐるドラマが示している。

   ※NHKクローズアップ現代+(2018年10月22日放送「世界で大ブレイク!ジャパニーズ・ウイスキー快進撃の秘密」)

   

   文・あっちゃん

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