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改ざんダンパーのマンションもう住めない?地下掘り返したり壁壊したりで交換には手間と時間

    「KYB」と「川金ホールディングス」が検査データを改ざんしていた免震・制振ダンパーは、ざっと1000もの建物で使われている。国は「震度6強や7でも倒壊の危険はない」というが、建物ごとにダンパーの数や構造は異なるので、個別に確認中という。

   改ざんダンパーが使われている建物は、今後どうするのか。ダンパーはビルの地下にある巨大なものだから、ビルの構造や配管によっては、簡単に取り出せない可能性がある。制振は壁を壊す。住民は立ちのくこともありうる。東京理科大の高橋治教授は「交換には時間がかかります。50階建てなら50階全部です。5年、10年とかかるのではないか」という。

   建築中のものも悩ましい。2年後の2月竣工の東京五輪水泳会場「アクアティクスセンター」は、問題のダンパーが32本が使われていた。工事関係者は「替えるなら早いほうがいいが、すでに屋根ができているから、上からのクレーンは使えない。横からどうやるかです」と頭を抱えている。

   これから建設するものは、ある意味、最も影響が大きい。データを改ざんしていた「KYB」と「川金ホールディングス」で、日本のダンパーの実に9割を作っているのだ。両グループは当面、交換に全力を挙げるため、新たな製品の供給はとまる。つまり、免震ビルの新築はストップしてしまうのだ。

   大手ゼネコンの担当者は「設計の見直しも検討している」という。地震に強い」が売り物だった高級マンションが、普通のビルになりましたでは、解約も出るだろ。

ゼネコンから納期せっつかれ検査甘く

   データ改ざんはなぜ行われたのか。名古屋大の福和伸夫教授は「手間のかかる生産工程が背景にあります。免震ダンパーは年間1000本程度の少量生産で、かつ大きなものだから、人手不足と時間の制約があり、その中で改ざんは起こったんでしょう」とみる。

   ダンパーは一つひとつ仕様が違う。オーダーメイドの手作り製品である。KYBでは、加工ライン、組み立てラインが並び、その先に検査機がある。検査で不都合があれば、組み立てラインに戻して調整するのだが、組み立てに7時間かかるものもある。検査ではねると時間も費用もかかるため、合格ラインを甘くしたというわけだ。

   とくに時間だ。KYBは「品質より納期を守りたいがために、(検査を)軽く考えてしまった」と弁解した。強い地震が相次ぐ中で、ゼネコンは国の基準を上回るものを求めていた。安全を求めながら、納期優先だったとしたら、ゼネコンにも問題は多い。

    *NHKクローズアップ現代+(2018年10月25日放送「激震!ダンパーのデータ改ざん~広がる影響 再開発・五輪は~」)