アメリカの中間選挙で目立ったのは「ミニ・トランプ」と呼ばれた共和党の候補者たちだ。中西部・インディアナ州で共和党から出馬したマイク・ブラウン候補もその1人だった。裕福なビジネスマン出身で、政界のアウトサイダーと言われている点もトランプ大統領そっくりだ。「ワシントンの政治をチェンジしたい」と言いう。
アリゾナ州から上院選に立候補したマーク・マクサリー候補は、かつては「共和党やアメリカの信念に反する」とトランプ批判をしていたが、「移民を阻止する壁をつくろう」と主張を変えた。こうしたミニ・トランプは66人が擁立された。
ミニ・トランプの陰でトランプに批判的な議員は次々と姿を消した。ジェフ・フレイク上院議員はトランプからツイッターで繰り返し誹謗中傷を受け、引退を表明した。NHKの調査では、フレイク氏のように、辞任や引退を表明した議員は37人もいる。
トランプは共和党内の批判勢力を排除して、自分に忠実な議員を増やそうというわけだが、トランプの選挙政策アドバイザーを務めるカトリーナ・ピアソン氏は、ミニ・トランプを支援するのは2年後の大統領選での再選のためと明かす。「中間選挙で勝利すれば、邪魔者を取り除き、公約をどんどん実現できるようになる。そうすれば再選も果たせるでしょう」
だが、ここにきてトランプ支持層からも、トランプ流の政策に疑問の声が上がってきた。曽祖父の代から共和党を応援してきたというインディアナ州の女性は、「幅広い価値観に耳を傾ける共和党に誇りを持ってきたが、異なる意見を排除するトランプには失望よ」と嘆く。前回の大統領選ではトランプ支持に回ったペンシルベニア州の炭鉱労働組合のエドワード・ヤンコビッチ副組合長は、「2年前にトランプに投票した人は失望し、考え直している」と語る。
この2年で分断を深めたアメリカ社会は、中間選挙を経てどこに向かうのか。選挙分析の第一人者で政治評論家のジョン・ゾグビー氏は、「アメリカの分断は以前からあったが、トランプ大統領の下でより深まった。今回の選挙は互いに中傷合戦ばかりでまさに戦争です。
考えたくないが、今のアメリカは南北戦争のような"分断の臨界点"に立っているのかもしれない」と嘆いた。
*NHKクローズアップ現代+(2018年11月6日放送「シリーズ アメリカ中間選挙②"分断"されたアメリカの選択は」)