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東芝ようやく「再建スタートライン」車谷CEOがぶち上げる「サイバーフィジカル」

    経営危機で「どん底」に陥った東芝の再建に奔走する車谷暢昭CEO(60)は、銀行マンだった。不良債権処理や合併に辣腕を振るった。

   車谷CEOがまず求めたのは幹部クラスの意識改革だった。しかし、コスト削減計画で出てきた見積もりは、旧態依然だった。担当副社長が「なぜこういう数字になるのか。甘い!」と怒るシーンがあった。

   若手社員との対話では、「横の連携が希薄」「ゾンビタスクもあった」「りん議だけで息切れ」「新しいものが生まれにくい」「失敗を恐れず、許容する仕組みがあったほうがいい」と不満が噴出した。

   若手は「社内に眠っているシーズ(事業の種)の事業化を加速」「残された技術の掘り起こし」「医療など新事業の開発」などを提案し、「若手に任せてほしい。しがらみのない若い力が必要です」という。製品開発の方法を見直すプロジェクトチームができ、これまでの縦割りでなく、職場横断(クロスファンクション)での協力と意思決定を早めるプロセスを軸に据えた。

家電各社すでに「生き残り改革」完了!東芝は追いつけるか

   武田真一キャスターのインタビューに車谷CEOが答えた。「(社員には)自信を持ってほしい。仕事は楽しくないといけない。自由に意見を言って、われわれが経営的に方向感をつけていく。目指すのはサイバーフィジカルです」

   グーグル、アップルなどのIT企業「GAFA」は、サイバーの枠にとらわれずに新規事業に踏み込む。製造業も境界を踏み越えてサイバーに切り込むというわけだ。

   「サイバー企業のやり方は、日本企業が苦手な分野でした。しかし、今後20年は、製造業のフィジカルの強みが一番重要になるでしょう。インフラとかを熟知していないと、テクノロジーを乗っけられない。サイバー、フィジカルどちらが勝つか。十分勝機はあります」(車谷CEO))

   8日(2018年11月)発表された再建計画(東芝Nextプラン)は、5年間に7000人の人員削減や工場の統廃合に加えて、「サイバーフィジカル」をキーワードにあげた。

   NHK経済部の茂木里美記者はこう見る。「3年間で利益を4倍にともいっています。コンセプトは明確ですが、どうやるのかが書かれていません。不正会計発覚から3年、東芝は経営危機脱却に追われ、この間に内外の大手電機メーカーは事業の選択と集中を終えています。東芝はようやくスタートラインに付いたばかりです」

   なるほど前途は多難だ。

   *NHKクローズアップ現代+(2018年11月8日放送「"どん底"から復活できるか 東芝・瀬戸際の闘い」)