2019年 10月 23日 (水)

地面師詐欺に利用される認知症高齢者――ニセ地主役やカネ出し子

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    5年前、赤坂の一等地をめぐる売買で、大手ホテルチェーンが地面師グループに12億円を騙し取られた。この時、地主になりすました高齢男性2人は認知症だった。認知症高齢者が犯罪の加害者になるケースが日本各地で起きている。

   九州で摘発された80代の認知症女性は、リフォーム業者を装った詐欺グループに「銀行でお金を下ろすのを手伝ってくれ」と頼まれ、他人名義の口座から90万円を引き出した。これは別の高齢者宅から盗んだ通帳で、高齢女性は「出し子」として利用されたのだ。

   犯行グループは他の認知症高齢者も利用して、計3500万円を騙し取っていた。グループは逮捕され実刑となったが、高齢女性は不起訴となった。女性の家族は「親切心を利用する、あってはいけないこと」と怒る。

「土地の売買契約に黙って立ち会うだけでいい」

   冒頭で取り上げた赤坂の一等地をめぐる巨額詐欺事件では、主犯格が詐欺の全体像を描き、「道具屋」が書類を偽造し、「リクルーター」の70代女性が認知症の地主役2人を連れて来た。積水ハウスから55億円を騙し取った事件でも逮捕された女性だ。

   ニセ地主の1人は老人ホームで暮らす93歳。元警察官だが、リクルーターの女性について、「女性で年配でね。忘れちゃったねえ。思い出そうにも忘れちゃうからどうしようもない」とほとんど記憶がない。

   もう1人は軽度認知機能障害と診断されていた87歳の男性だ。ある保証人になったことで老後の蓄えを失ってしまったころ、地面師グループに声をかけられた。「説明役」の60代の男は「地主の代わりに土地の売買契約に立ち合ってほしい。いるだけでいい」と話した。地面師グループにとって、判断力は低下しているが、受け答えはできる高齢者は都合がいい。

   3カ月後、東京・赤坂駅近くの銀行の防犯カメラに地面師グループに案内される2人の姿が記録されていた。交渉には買い手側の弁護士と2人の司法書士も立ち合った。地主役の2人はニセの名前を名乗り、ニセの住民基本台帳カードを提示して退席した。その数時間後に契約は成立し、12億5000万円が地面師グループに支払われた。

   今年9月(2018年)、87歳の男性は執行猶予付きの有罪判決が言い渡された。93歳男性も起訴された。しかし、裁判所による鑑定で、「犯行当時、認知症が相当進行していたと推察される」という結果が出て、裁判は中断したままだ。

見かけしっかりしていて判断力が低下してる老人は使いやす

   取材に当たったNHKの橋本尚樹記者は、「犯罪グループが目をつけるのは、財産被害にあっているような騙しやすい高齢者、受け答えはできるが判断力が衰えた高齢者です」という。

   川崎幸クリニックの杉山孝博院長は「見かけはしっかりしていても、判断力が落ちていて、人のいうことをすぐ聞いてしまう方が認知症の人には多く見られます」と話す。

   全国の地域包括支援センターを取材すると、廃品回収場所から不法に金属を持ち出す回収役として利用されるケース、言われるままに通帳を売り渡してしまい、その口座が振り込め詐欺に使われたケースなどの事例が10件以上あった。

   決め手になる解決策は見えていない。橋本記者は「高齢の認知症患者が犯罪に利用されている実態は、まだまだ埋もれている可能性がある」と指摘した。

   武田真一キャスター「社会全体で共有して備える必要を感じました」

   *NHKクローズアップ現代+(2018年11月13日放送「"地面師"に"出し子"!? 認知症高齢者が犯罪に利用される...」)

文   バルバス
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