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あっぱれ週刊文春、週刊新潮!校了直前に飛び込んできた「ゴーン逮捕」なんとか間に合わせて大特集

   ニュース週刊誌の底力を見せてもらった。11月21日(2018年11月)の新聞広告のことである。週刊文春は「強欲ゴーンVS.日産『離婚訴訟費用まで』」、週刊新潮は「200億円荒稼ぎ!『カルロス・ゴーン』の『酒』と『女』と『社食ラーメン』」と右トップに特筆大書してあるではないか。

   ゴーン逮捕の一報が流れたのは19日の月曜日の夕方であった。今週は金曜日が祝日のため、両誌の発売は1日早い21日である。したがって、ほぼ校了という段階で、この衝撃的なニュースが編集部に飛び込んできたはずだ。

   私にも経験があるが、これを入れるか入れないか、瞬時の判断を編集長は求められる。入れるとなれば、即刻取材を開始し、まとめ原稿を印刷所に入れて、校了するのは深夜になる。酒も呑めない。これが辛いのだ。

   今はもっとスピーディなのだろうが、取材する時間は今も昔も同じである。しかも、週刊文春はこれを巻頭に持ってきた(週刊新潮は後半)。失礼だが、内容は両誌とも新味はない。週刊文春は以前、独占告白させたゴーンの前妻・リタ・ゴーンさんの電話インタビューだけが新情報といえるだろう。彼女はこういっている。

   <「おカネに関しては、カルロスは正しいことをしたことがありません。高額な所得を隠すために、色々なことをしていた。今回の逮捕は、彼のような人間には当然の結果だと思います。彼の弁護士から『俺は(税金などについて)魔法を使える』と自慢されたこともある。カルロスはお金(ママ)に関する感覚がおかしい。(中略)日本での逮捕を機に、フランスでも何か出てくるでしょう。あの国は税や所得関連の不正を探すのが得意だから」>

   かなり冷たいいい方だが、離婚に当たってそうとうゴタゴタし、その後も、2人の間のことをべらべら喋ったことで、ゴーンがレバノンの裁判所に高額な賠償金を払うよう求めたことなどが、尾を引いているのであろう。

   世界第2位の自動車産業のトップ、レバノンの英雄、ブラジルでは大統領候補ともいわれていたという「大物」の逮捕は、これからどう推移していくのだろう。

   今回は6月から始まった日本版「司法取引」で、日産内部の人間たちが捜査に協力したと報じられている。これについて、東洋経済オンライン(11月21日)で田上嘉一弁護士がこう書いている。

   <「司法取引によって免責されるのはあくまで刑事責任にすぎない。前述の取締役の善管注意義務違反(過少申告の事実を知りながら作成に協力した)に基づく責任などは、司法取引によっても免れるわけでない。いかにゴーンに権限が集中していたとはいえ、これだけの報酬差額が生じていたにもかかわらず、不正を見抜けなかった、もしくは見過ごしていたのだとすれば、企業のガバナンスとして大きな支障があることは間違いなく、他の経営陣も何らかの責任追及は免れないのではないだろうか」>

   ルノーに吸収される話が進んでいたため、それを是としない日産幹部たちのクーデターという見方もあるが、捜査が進めば、西川広人日産社長を含めた幹部たちも無傷ではいられないはずだ。

   ゴーンショックは、フランス政府まで巻き込んで国際問題に発展すること必至である。

谷村新司の修羅・・・息子はトイレ盗撮、娘は音信不通、嫁は「騙された」と恨み辛み

   ゴーン逮捕がなければ、週刊文春は歌手の谷村新司(69)の息子(40)の「トイレ盗撮」騒動がトップの話題だっただろう。冒頭、谷村が謝るシーンで始まる。

   <「原因を作ったのは崇(仮名)だし、それでどれだけの人に迷惑をかけているのか。こんなことを二回もして。一回目ももちろんそうだけど二回目をやった時は何を考えているんだ、と思った。死に物狂いで働け、と言っていたのに・・・」>

   事務所関係者たちが固唾を飲んで見守っている前で、谷村は「親としてやるせない。本当に申し訳ありません」。そう口にすると、涙を浮かべながら頭を垂れたという。

   これは週刊文春が目撃したのではなく、事務所の人間が週刊文春に話したものである。

   いまさら谷村の歌手としての凄さを縷々述べても致し方ないだろう。歌手としてだけではなく、日本と中国の友好にも長年尽力してきた。今年、北京で開かれた日中平和友好条約40周年を祝う式典でも「昴」を歌い、名門・上海音楽学院の名誉教授でもあり、中国では絶大な人気を誇るそうだ。

   家の外では暖かい風が吹いていても、家の中はこのところ冷たい嵐が吹き荒れていたという。谷村には、無名の頃、彼を助けてくれた妻のほかに、歌手の長女(38)と自称アートディレクターの長男がいる。

   02年に谷村は個人事務所「ダオ」を設立し、妻が代表取締役、谷村、息子、娘が取締役に入っている。谷村はこれまでも折に触れて、家族への思いを語ってきた。

   だが、3年ほど前と今年の春、ある事件が起きて家族はバラバラになったという。谷村の息子が、事務所の女子トイレにカメラを設置して、女性スタッフのことを密かに撮影していたことが発覚したのである。それを被害女性の知るところとなり、彼女は「こんな事務所では働けない」と大問題になった。当然だろう。

   谷村が内内で収めるべく、スタッフを説得し、彼女も我慢してくれることになったというのだが、これで一件落着ではなかった。谷村は息子を有名私立校に入れてエスカレータ式に大学までいかせ、卒業してからも事務所に入れて、仕事も与えてきた。同じ高層マンションに部屋まで持たせ、甘やかせ続けてきた息子が自立などできるはずはなかったのだ。

   息子を事務所から退社させ、盗撮事件についてはかん口令を敷き、息子夫婦を京都へ移り住むようにしたそうだ。だが、経緯を知らなかった妻は、後で事実を知らされ、苦しみぬいた末に、子どもへの影響を考えて離婚に踏み切ったというのだ。今年7月のことだった。

   その際、谷村は、「不愉快な思いをさせてしまった」と詫び、子どものために月々50万円を生活費として払うといったのに、後日、谷村はこの約束を反故にしてしまったそうだ。彼女は2人の子どもを抱え、元夫から送られてくる月数万円の養育費では生活できず、働いているという。

   このほかにも、谷村の事務所に名を連ねているスピリチュアルな力のあるという人間に、谷村は「先生」と心酔している話もあるが、ここは割愛。

   家の顔と外の顔の違いのある谷村に、娘は反発し、昨年2月に結婚したが、以後、音信不通だという。週刊文春の直撃に谷村は、こう答える。長男の盗撮事件については、「お話しすることは何もありません」。家族が一家離散状態にあることについては、「ええ、それは自由にお考えいただいて、はい」

   今、病に臥せっている長嶋茂雄の家もそうだったが、国民的歌手とまでいわれる谷村の家も、外からは窺い知れない「修羅」を抱えていたようである。

いよいよ加速する週刊誌の部数急減!スクープ連発でも歯止めかからぬ週刊文春

   週刊誌界に衝撃が走っている。日本ABC協会が2018年1月から6月までの雑誌販売部数を発表したのだ。主だった週刊誌が軒並み部数を落としていることは、予想されたことだが、想定外のひどさである。

   週刊文春は週刊誌1位の座を守ったが、33万5656部で、前年同期比で90・13%という落ち込みである。これは前任者の新谷編集長がいた時だから、次々にスクープを発信しても、部数の下落に歯止めはかけられなかった。

   2位は週刊新潮。ここだけは前年同期比で101・64%と唯一部数を伸ばし25万1403部。その次に異変が起きた。3位に週刊ポストが入ったのである。21万1336部で前年同期比97・24%。週刊ポストの軍門に下ったのが週刊現代だ。何しろ前年同期比で79・15%。実に20%を超える部数減である。発行部数は20万9025部まで落ち込んだ。

   週刊ポストと並んで、老人健康雑誌に特化した誌面づくりを推し進めてきたが、週刊ポストにはその効果が出たが、週刊現代は週刊ポストに食われ、部数を急降下させてしまった。

   フライデーも9万2112部で前年同期比73・06%と、こちらもひどい。週刊プレイボーイが7万9675部で前年同期比は92・01%、週刊朝日が7万7451部で前年同期比は94・26%。

   かつては国民雑誌といわれた文藝春秋も部数減が止まらず、23万8288部で前年同期比が96・54%。

   目ぼしい雑誌で前年同期比100%超えは、ハルメクとレタスクラブでともに113%台で、ハルメクは17万5972部、レタスクラブは16万6654部。50代、60代がターゲットのオバサン雑誌であるが、この層へ向けた雑誌は好調である。

   雑誌の話題をもう一つ。2001年に主婦と生活社が創刊した「LEON」は、ちょいワルオヤジというコンセプトが受け、一世を風靡した。これを立ち上げた編集長の岸田一郎氏は、一躍名物編集者として脚光を浴びた。主婦生を離れた岸田氏が、旅行代理店のH,I.S.などから出資を受けて創刊したのが「GG」(ゴールデンジェネレーションズの略)だった。コンセプトは「ちょいワルオヤジの余生快楽誌」。だが、時代は変わってしまっていた。

   下流老人が増え、老後破産がたびたびニュースになる中で、贅沢志向の雑誌は苦しいだろうと、私は見ていたが、案の定、創刊時から赤字を続けてきた「GG」は、総額1億3000万円を超える負債を残して、10月16日、突然休刊が発表された。

   印刷所はもちろん、編集プロダクション、執筆者たちへの原稿料の未払いが、業界内では大きな問題になっている。週刊文春によれば、編集部員からは、岸田氏の部下に対する激しいパワハラ、色あせていた岸田ブランド、クライアントたちからは「あいつがいる限り広告は出さない」といわれたなどという怨嗟の声が上がっているそうである。

   それに、休刊前の9月に、「俺は疲れたわ、後は任せた」とさっさと編集長を退任し、取締役も退任していたというのである。制作スタッフの一人は「岸田さんは自分も被害者だと思っているようですが、編集長として雑誌を主導してきたのは事実」だと難じている。

   たしかに、「GG」を出す会社を立ち上げ、取締役になり、編集長としてやりたい放題やって、倒産する前に逃げ出したのでは、無責任というそしりを受けても致し方ないだろう。 どんなに優秀なワンマン編集長でも、一人で雑誌は作れない。編集長の意を汲んで動いてくれるスタッフが、最低でも2、3人は必要である。それなのに、パワハラで部員が次々辞めていったというから、そもそも編集部の体を成していなかったのだろう。岸田氏に資金を提供した一人、ベンチャーの草分けともいうべき西和彦氏が、こういっている。

   <「名物編集長も老いてしまったということじゃないですか。肉体的にではなく、編集者としての精神性でしょう」>

   私も70歳の男だけに限定にした雑誌を創刊しようと考えている。だが、自分でもびっくりするほどの記憶力や気力の衰えは、昔のように「見る前に跳べ」というわけにはいかない。

   私も、雑誌作りに失敗すれば、結局、あいつはヘア・ヌードだけしかできなかったなと、いわれるだろうな。