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「地震・台風・大雨」家の修繕できぬまま半年!ゴーストタウン化する被災住宅街

    今年(2018年)は災害が相次ぎ、被災地の復興や生活再建がいっこうに進まない。6月に震度6弱の地震に襲われた大阪北部では5カ月たった今でも屋根の修繕が進まず、ブルーシートで覆われた家が目立つ。建設・建築業界の人手不足が深刻で、修繕依頼をしても1年も2年も先になってしまうのだ。地震の3カ月後に台風21号にも襲われたが、世間の関心も薄れ、いまではボランティアもなかなか来てくれない。

   こうした状況に、家の修繕を諦める高齢者も現れ始めている。7月の西日本豪雨の被災地、岡山県真備町にはいま住民があまり見られない。鎌倉千秋キャスターは「ご覧のように、夜になると街は真っ暗です」とリポートする。被災者の1人は「8割の方が他の地域に移られて、ゴーストタウンのようになっています」と嘆く。

   去年7月の九州北部豪雨で洪水被害に見舞われた大分県日田市では、今年9月にやっと護岸工事が始まった。市の計画では復旧工事は今月(2018年11月)までにすべて終わる予定だったが、いまだに応急措置だけの場所が目立つ。

深刻!建設・建築業界の人手不足

   復旧を阻んでいる建設業界の人手不足は、数字で見るとはっきりする。1997年には685万人いた建設業就業者数は、2017年に498万人と約187万人減少している。日本総合研究所の山田英司理事は「とりわけ現場監督が逼迫しており、工事をマネジメントする人間がいないので、工事をスタートできないという例はかなりあります」と話す。

   全国の被災地を調査している「人と防災未来センター」の菅野拓主任研究員は、こう分析している。「被災地が増えたとしても、昔なら社会に対応力がありました。少子高齢化で社会自体が対応する力を蓄えていない状況になっている。今は壊れたものを元に戻すことが難しい」

   2年前に地震で1万6000軒が被災したが、すでに住宅の修繕がすべて終わっている鳥取県のようなケースもある。県が一部損壊の被災者に最大30万円の支援金を出したためだ。それだけではなく、建設業の人材確保のため、県外から1カ月で延べ200人の職人を集め、職人の宿泊費を一部負担した。

   災害多発時代にわれわれはどのように向き合えばいいのか。菅野拓主任研究員は「旧来型の土木主体の復興は限界にきています。道路を造り直しても人の生活が戻らなければ、ゴーストタウンになってしまいます。優先順位をつけ、限られた資源をうまく使う仕組みを作っていかなくてはならないと思います」と話す。

   武田真一キャスターは「社会の対応力が低下する一方で、どういった備えが必要か、年末の特番で深掘りしていきます」と予告した。

   *NHKクローズアップ現代+(2018年11月27日放送「復旧できない... 災害多発時代 あの被災地は今」)