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なぜ急ぐ「外国人労働者受け入れ」――中小企業向け参院対策?自民党内にも慎重論

   「外国人材拡大」法について、安倍首相は「人手不足は深刻。対応は待ったなし」と成立を急ぐが、野党は「詳細がない。中身がスカスカ」(立憲民主党の蓮舫氏)と野放図な運用を懸念する。

   外国人労働者数は昨年(2017年)は127万人余りで、この10年で2.5倍になった。これまでは、日系人・永住者、留学生、技能実習生、専門技術分野に限られていたが、新法では介護、建設、農業、漁業など14業種に「特定技能」枠を設け、5年間で最大34万5000人を受け入れるとしている。

   ただ、政府は運用の詳細は法案成立後に決めるとしていて、大量の外国人労働者の受け入れでどんなことが起きるのか予想がつかない。それでなくても、外国人の失踪が、昨年だけで7000人、5年間で2万6000人もある。低賃金労働の強要など、悪質な雇用例も後を絶たない。

法案だけ成立させて細かい中身は後から・・・健保や年金はどうするの?

   たしかに、人手不足は深刻だが、なぜ政府は法案成立を急ぐのか。NHK政治部の中田晋也デスクは「事実上の移民政策だと、自民党の中にも慎重論があります」という。それでも、経済界の、とりわけ中小の強い要望で、6月の骨太の方針に盛り込まれた。来年4月から施行というのも、参院選を意識したとも見られるという。

   政府は年内に総合的な対応策をまとめるとしている。柱は、企業に対して「日本語教育を含めた生活支援」「日本人と同等の賃金水準の確保」「不法滞在への対応」を求めるなど。また社会保険では、「健康保険」「厚生年金」の適用範囲(家族、扶養配偶者など)も詰めるという。

日本社会は異なった文化・宗教を受け入れられるか

   中田デスクは「生活者の目線に立った議論が必要です。異なった文化、宗教の人たちをどう受け入れるか。治安も含めて、不安のないようにしなければなりません」

   武田真一キャスターも「日本がどう見られているかの問題でもあります。本当に来てくれるのでしょうか」

   健康保険や厚生年金までが論議になっているということは、実質は移民政策の変更といっていい。そんな重大な変更を、「人手不足」だからと急いでいいのか。高齢化も労働年齢人口の減少も、何十年も前から予測できたことではないか。

   *NHKクローズアップ現代+(2018年11月29日放送「どう考える?"外国人材拡大"法案」)