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<パットマン 5億人の女性を救った男>
低価格の生理ナプキンでインド女性を解放したい!実話を元にした抱腹絶倒の開発話

   2001年、インドの小さな村。鉄工所の職人として働くラクシュミは、妻・ガヤトリとの新婚生活が始まっていた。ガヤトリは生理の日、数日間家に入らずにベランダで過ごす。

   インドでは「月経は不浄」という概念があり、生理が始まると女性は家から出て生活する風習があるのだった。当時のインドではナプキンは高級品で、女性の約12人に1人の使用率でしかなかった。愛する妻が汚いボロ布で手当てをしているのを知ったラクシュミは心を痛め、安価なナプキンを自作しようと動き出す。

偏見と闘いながらついに完成

   南インド出身の発明家で社会活動家のアルナーチャラム・ムルガナンダムが、低価格で衛生的な生理用ナプキンを開発した実話を元に、フェミニンな作品を撮ることで有名なインド人監督、R・バールキが映画化した。

   ナイーブなテーマだが、とにかく笑えるシーンが多い。鉄工所の仕事そっちのけでナプキンの試作品作りに奔走するラクシュミが、女性用下着を付け、動物の血を詰めたゴムボール製の人工子宮を取り付けて実験中、自転車でバランスを崩し、ガンジス川に飛び込んでしまうなど、抱腹絶倒だ。

   しかし、人びとの目は冷たい。「生理」という言葉を発することすら不道徳とされていたのだから、ラクシュミの行動は異常としか見られなかった。そんな彼が「聖なるガンジス」を汚したとあれば、非難は免れない。

   結局、ラクシュミはひとり村を離れることになってしまう。しかし、あきらめない。試行錯誤を繰り返し、ついに安価でナプキンを作れる製造機を作り出した。

笑いの中に身分差別制度カーストを批判

   インド映画ならではの歌やダンスを盛り込んだ娯楽映画だが、現在もインドに根深く残るカースト差別を告発し、女性の自立を社会が抑制してはならないという思いを、ナプキンという商品に託している。ラクシュミのナプキン製造はインドの女性の雇用も増やした。

   ラクシュミが国際連合で演説するラストシーンは長尺だが、妻を真剣に愛することでインドの5億人の女性(当時)を救うことができる。カースト制だってもっと民衆の生活に寄り添うように共存することができる―――と、ひとつひとつラクシュミが言葉を紡いでいく。観客に向けた演説でもある。

おススメ度☆☆☆☆

丸輪 太郎