2024年 4月 20日 (土)

2018年「世の中を騒がせた週刊誌記事」スクープ連発の名物元編集長が選んだこの10本

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第1位<小室哲哉"裏切りのニンニク注射">(『週刊文春』1月25号)

   週刊文春砲がさく裂した。J-POPシーンを創り上げた音楽プロデューサー・小室哲哉(59)の不倫である。相手は、以前からニンニク注射を打ってもらっていた看護師というのだから、注射を打ってもらって、今度は小室が彼女に注射を打っていたという話のようだ。

   だが、事はそう簡単ではなかった。華原朋美を含め、過去にさんざん浮名を流してきた小室だが、2002年にglobeのボーカル、KEIKO(45)と再婚している。結婚式には5億円かけたそうだが、KEIKOをクモ膜下出血が襲って以来、6年の間はリハビリに取り組むKEIKOを小室は傍らで支え、メディアの取材にも「僕にはこの人しかいない」「彼女に寄り添いたい」と献身を語ってきた。

   ところが、「小室とA子さんの出会いは数年前、彼女が看護師として勤めていたクリニックで、ビタミンB1を主成分とする"ニンニク注射"を受けたときに遡る。やがて小室のスタジオ、そして自宅に彼女を呼んで個別に接種を受けるようになり急接近。患者と看護師だったはずの関係が、いつしか男女の仲へと発展した」(週刊文春オンラインより)

   リハビリ中の妻を実家に行かせて、その間に女性を引っ張りこむ。これは一番まずいパターンだ。かつては音楽界の帝王といわれた小室は、事業の失敗から借金を重ね、ついには詐欺罪で逮捕されて、懲役3年(執行猶予5年)の有罪判決を受けた。そのどん底の小室を支えたのはKEIKOであった。その心労がたたり、病に襲われたのではないのか。その妻を裏切ったのだ。

   私は小室のファンではないが、同時代に一人の男の栄光と挫折を見せてもらった。何となく「哀れ」な不倫物語である。

   週刊文春の記事が出てすぐに、小室が記者会見を開き、この業界から引退すると発表した。妻KEIKOの病状も語り、時には涙を見せていた。この会見の後ぐらいから、SNSで「クソ文春」などという週刊文春批判が巻き起こり、私のところへも、女性セブンと東京新聞から取材の電話があった。

   私の考えはこうだ。「週刊誌は創刊以来、不倫を含む『スキャンダル』と『メディア批判』は大きな柱。けしからんという声は昔からあったが、そこは揺るがない。週刊文春だって引退させたいと思っていたわけではないだろうし、多少の批判で撤退するほど週刊誌はやわじゃない。これだけ不倫報道が注目されるなら、今後も情報が手に入れば不倫報道は続くだろう」

   おそらく週刊文春は、ベッキーの不倫で、こうしたもののおいしさがわかったのだろう。1粒で2度おいしいのが不倫報道である。不倫報道→当人の謝罪または否定会見→否定すればそれに対しての反論報道と、一つの話で何回もやることができる。

   それには週刊文春の読者の半分が女性だということもある。女性は不倫報道に関心が強い。週刊新潮が乙武の5人不倫を掲載したが、部数はほとんど動かなかったのは、女性読者が少ないからである。

   <「小室哲哉は許せない」KEIKO 親族怒りの告発>(『週刊文春』7月12号)では、グラビアに、マスクをしているが、紀ノ国屋の袋を持ち、にこやかに笑っている女性が載っている。キャプションに「私は元気です by KEIKO」とある。親戚も「元気で体操教室に通っている」と話している。

   あれ~、彼女はくも膜下出血を発症してリハビリ中で、小学校4年生の漢字ドリルをやるレベル程度にしか戻っていないと、小室は涙ながらにしゃべっていなかったかと、週刊文春は嘘を暴いた。

   推測するに、不倫報道の多くは、当事者の周辺にいる人間からのタレコミであろう。「あんなことをしている人間は許せない」「奥さんがかわいそう」などという動機から、「文春ならやってくれるだろう」と連絡をするのだ。

   不倫報道などするな? 週刊誌というものは、くだらない不倫や、つまらない安倍批判や、最低の大相撲など、新聞やテレビがやらない、できないことをやるのだ。そこを無視した批判などに、ビクともしないはずだ。

   【寸評】

   この2本の記事がすごい。第1報の後、小室が泣きながら会見を開き、これからは妻と一緒に生きていくといったため、「小室が可哀想だ」と、週刊文春への批判の声があちこちから上がった。

   週刊文春も戸惑ったに違いない。だが、週刊文春は半年かけて、小室のいい分が本当かどうか検証したのである。これってなかなかできないことだ。

   故郷に帰って順調に回復してきているKEIKOの元気な姿を写真に撮り、小室の嘘を完膚なきまでに暴いた。何の根拠もなく汚された"誇り"を、再取材することで見事晴らして見せたのである。

   週刊文春を敵にしたら怖い。多くのすねに傷を持つ芸能人や文化人を震え上がらせたに違いない。スキャンダルの大きさでは週刊新潮の福田事務次官の記事が勝るとは思うが、週刊誌の矜持を見せてもらったということで、こちらを1位にした。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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