2024年 4月 23日 (火)

2018年「世の中を騒がせた週刊誌記事」スクープ連発の名物元編集長が選んだこの10本

第4位<「イッテQ」は宮川大輔「祭り企画」をデッチあげた>(『週刊文春』11月15号)

   日本テレビ系の「世界の果てまでイッテQ!」は、2007年に始まり12年には年間視聴率1位を獲得した人気番組である。現在も20%超の視聴率を誇り、4年連続、視聴率3冠を続ける日テレの顔といえる存在だそうだ。内村光良をメイン司会に、ジャニーズの手越祐也、イモトアヤコらが体当たりの海外ロケに挑むバラエティで、2011年に「イモトが挑む南米大陸最高峰アコンカグア登頂スペシャル」は、放送文化の発展と向上に貢献したとして、ギャラクシー賞を受賞している。

   この番組のモットーは「ウソとヤラセの完全排除」だそうだが、週刊文春が同番組で「ウソとヤラセがあった」と報じた。5月20日に放送された「橋祭りin ラオス」がそれである。「イッテQ」の中の人気企画で、芸人の宮川大輔が世界各地で行われている祭りに突撃参加して、その模様を伝えるというものだ。

   ロケ地はラオスのビエンチャン。年に1度開かれる橋祭りは、全長25メートルの細い板(これを橋に見立てている)の上を自転車で渡るのだが、4つの球が回転していて、これに衝突するとたちまち泥水に落下してしまうというものだ。20人の参加者による勝ち残り方式。VTRでは会場の盛り上がりも紹介しながら、「町中の人が集まってきた」というナレーションが入っている。

   だが、この地に赴任して数か月という日本人駐在員が、こんな祭りを聞いたことはないし、周りのラオス人も誰も知らない。そもそもこの地域ではバイクには乗るが自転車に乗る人はあまりいない。「視聴者だけでなくラオス国民を馬鹿にした」番組だと週刊文春に告発した。駐日ラオス大使館に問い合わせたが、そんな祭りは聞いたことがないという。早速、週刊文春は現地へ飛んだ。

   現場はビエンチャンの中心から徒歩10分の、乾期で干上がってできたメコン川の河川敷。結論でいうと、行われていたのはラオス産のコーヒーを宣伝する「コーヒーフェスティバル」で、その隅っこで、番組のスタッフが設営し、撮影したものだったそうだ。

   コーヒーフェスの実行委員たちは、日本のテレビ局が自転車のアクティビティをやりたがっていると連絡があり、自転車と障害物のボールはテレビ側が用意したと話し、「イッテQ」の映像を見せると「フェイクだね」と断言したのである。

   テレビ側は参加した若者たちに、1位は日本円にして1万7000円、2位以下にも現金や撮影で使った自転車をあげていた。ヤラセなどではなく、架空の祭りをでっち上げ、視聴者にウソをつき、ラオス国民を侮辱したといわざるを得ない。

   これを手掛けたバンコクを拠点に通訳やコーディネートしている社の日本人社長は、「橋祭りはラオスで行われている」と強弁し、日テレ広報部も「橋祭りはメコン川流域などでかねてから行われている催しで、地元のテレビ局などでもとりあげられております」と、週刊文春に回答している。

   これまでもテレビは、数々のヤラセやでっち上げをして謝罪に追い込まれ、番組が打ち切りになってきた。だいたいメディアというのは攻めに強く守りに弱い。

   【寸評】

   テレビは視聴率がよければ、それを維持しようと、ありもしないことをデッチアゲ、バレると下請けのせいにする。この事件も、第一報では強気だった日テレ側も、第2弾「『イッテQ!』手越祐也カリフラワー『祭り』にもデッチ上げ証言」(『週刊文春』11月22号)が出ると、あっさり降参した。週刊文春の取材力を軽視していたのではないか。

   番組を止めるのかと思ったら、祭りコーナーだけを休止して、存続させてしまった。長年、視聴率首位を走ってきたフジテレビが、信じられないような凋落ぶりである。対応を間違えると、日テレもフジの二の舞になる。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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