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<アリー/スター誕生>
レディ・ガガ初主役で演じた「歌姫の哀しさ」エンタメに終わらぬ感動もの人間ドラマ

   歌手となることを夢見るアリーだが、周囲からは「大きな鼻では売れない」と言われ、容姿に自信が持てない。ウェイトレスとして働いているドラッグクィーン・バーで、金曜日の夜に歌うだけだ。そこに、近くでライブを終えたばかりの世界的ロックスター、ジャクソン・メインが訪れた。

   ジャクソンはドラッグやアルコールに溺れ、世話人の兄に支えられて何とか生きているのだが、一目で彼女の才能に惚れ込み、恋に落ちる。アリーを自分のライブに出演させ、アリーはたちまち音楽の世界で高く評価されるようになるが、二人はそれぞれに大きな壁にぶつかる。

   アリー役をレディー・ガガが演じている。映画初主演だ。

人気者になればなるほど深まる恋人との溝

   レディー・ガガの圧倒的な歌唱力とカリスマ性を楽しむエンターテイメントかと思っていたが、そう感じたのは冒頭だけで、実に上質な人間ドラマになっている。

   アリーは売れるようになって、次第に「周りが求める形」に変わっていく。赤毛とへそ出しの衣装、妖艶でセクシーなダンスでステージを盛り上げ、歌は二の次になっていったのだ。そんな彼女をガガが演じているのも見所だ。

   ジャックはアリーの成功とは裏腹に、もともと悪かった片耳に加え、聞こえる方の耳も支障をきたして、思うようなパフォーマンスができず、さらにアリーの変身ぶりが気に入らず、いよいよドラッグと酒に溺れていく。それでも、アリーのことを愛し続けている。

   成功するために自分から離れていこうとするアリーを止めようとはしない。はじめて出会った時と同じように、「彼女の才能を応援する」姿勢を崩さない。彼女の成功を誰よりも信じ、傷ついて落ちていくジャクソンが哀しい。

歌手としての成功は本当の幸せだったのか

   アリーはグラミー賞・最優秀新人賞に選ばれ、授賞式でスピーチをはじめると、酔っ払ったジャクソンが付いてきて、意識を失って倒れ、晴れ舞台を台無しにしまう。自己嫌悪に陥り、アリーの足を引っ張るばかりだと思いつめたジャクソンは、ある選択をする。

   物語はけしてハッピーエンドとは言えない。「スター誕生」というタイトルもなんとも皮肉だ。

   アリーは自分が望むようなスターになったのだろうか。ジャクソンと出会ったころの、まだ原石だったころの、愛し合い、歌い合う姿が本当の幸せな時間だったのではないだろうか。二人にとって音楽とは何だったかを考えさせる映画に仕上がっている。

   ガガはこの映画で、ゴールデン・グローブ賞「映画の部主題歌賞」を受賞した。

   PEKO