2019年 7月 17日 (水)

裁判員裁判10年――あなたは犯罪者を裁けるか?「証言に涙が出た」「殺人犯が怖かった」

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   「市民の視点や感覚を裁判に反映させたい」と2009年5月に導入された裁判員裁判制度が間もなく10年を迎える。この間、裁判員裁判は1万件以上、裁判員として参加した人は8万8000人以上にのぼる。

   では、納得が得られる制度として着実に定着してきたのかどうか。裁判員を経験した渋谷友光さんは、「大きな責任と、その人(被告)の刑を決めなければいけないという寂しさを感じました」と話す。担当したのは被告(当時22)が強盗強姦の罪に問われた裁判だった。性犯罪としては、初めての裁判員裁判として注目された。

   渋谷さんは当初、被告に対して強い憤りを感じていた。ところが、被告の証言を聞くうちに印象が変わっていったという。「生まれたときに、すぐ両親が離婚し、親せきの家で養子として育てられたが、支えがなく孤独だった」という話に、父親がいなかった自分の境遇が重なった。

   「彼は『自分を誰も信じてくれない』と表現したんですね。そのことが非常に心に引っかかり、もしかしたら私もそこに立つことになっていたかもしれないって、彼への思いが複雑に湧き上がり、涙が出てしまったんですね」

   判決は求刑通り懲役15年。ただ、判決を言い渡したあと、裁判長は渋谷さんらの思いを受け止めて、次のような言葉を付け加えた。「決してあなたを諦めた15年という判決ではありません。あなたのことを信じて、この15年の中で罪と向き合い反省し更生してくれると信じた15年なんです」

   数か月後、渋谷さんは関係者を通じ被告の言葉を聞いた。「それは、『法廷で私のために泣いてくれた裁判員がいました。私はあの人の涙が忘れられません』というものでした。私たちの思いが届いたんだと確信したんです」

   渋谷さんは裁判員を経験したことがきっかけで、孤独を感じる子どもたちを支援するNPO法人を立ち上げた。裁判員制度の趣旨である市井の人の感覚が被告の心に届いたケースだろう。

見て、聞いて、分かる裁判に大きく変化

   10年間で判決内容にも変化が出てきた。介護殺人の執行猶予付き判決が増え、性犯罪への厳罰化が進んでいる。

   「国民の視点、感覚を裁判に取り入れるという変化は出ているのでしょうか」と、武田真一キャスターはゲストの大城聡弁護士に聞いた。大城弁護士は裁判員経験者の集まりを主宰している。

   「法廷が見て、聞いて、分かる裁判に大きく変わってきています。以前は専門家が専門用語を使って話し、法律の専門家でないとわかりにくかった。そこが違ってきました」

   ただ、課題も残されたままだ。その一つが、凶悪な殺人事件の公判が裁判員たちへ与える強い精神的なストレスである。兵庫県の女性が担当したのは、首謀者の女が中心になって複数の家族を監禁、殺害した尼崎殺人死体遺棄事件の共犯者の裁判員裁判だった。

   メモを取るうちに「殺される」「虐待」「死ぬ」という言葉が増え、裁判員に選ばれたことへの重さ、不安、怖さを感じた。とくに衝撃を受けたのは、監禁された被害者を虐待する音声の記録だった。

   「(首謀者の)おばあさんが低い声で、『(髪の毛を)燃やせ、燃やしたらいい』と。被害者の気持ちをイメージして、心が痛み一番しんどかった」と話す。裁判は127日かかり、守秘義務が課せられたために、誰にも相談できず追い詰められたという。

   大城弁護士「裁判員が急性ストレス障害を抱えてしまうケースもあり、証拠の見せ方、たとえばカラー写真を白黒にするとか、工夫を凝らすなどで対応しています」

   裁判員は20歳以上から無作為に抽出され候補者から選ばれるが、候補者になった人はこれまでに280万人を超えた。ところが、仕事や病気、裁判の長期化を理由に辞退した人は66%にのぼっており、手続きの途中で無断欠席する人も増えているのが現状のようだ。

*NHKクローズアップ現代+(2019年1月23日放送「あなたが裁判員に!そのとき何が?~制度開始10年 経験者たちの証言~」)

文   モンブラン
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