2019年 11月 17日 (日)

<ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー>
サリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」執筆に立ち会っているようなワクワク感!なぜあれを書かなくてはならなかったのか・・・

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©2016 REBEL MOVIE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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   青春小説の金字塔として世代を超えて愛されている「ライ麦畑でつかまえて」の作者J・D・サリンジャーの半生を描いた。1939年、大学中退を繰り返していたジュリー(サリンジャー=ニコラス・ホルト)は、作家を目指してコロンビア大学の創作文芸コースを受講する。

   そこの講師であった文芸誌「ストーリー」の編集長のウィット・バーネット(ケヴィン・スペイシー)に認められ、短編「若者たち」がストーリー誌に採用される。作家としての第一歩を踏み出したジュリーだったが、第2次世界大戦勃発で陸軍へ入隊。戦地の最前線で地獄のような日々を送り、終戦後もそのトラウマに悩まされる。

   そんな中で、自身を投影した少年を主人公とした「ライ麦畑でつかまえて」を発表し、ベストセラーとなる。作家としての成功をつかんだジュリーだったが、創作に対しての真摯さゆえに次第に世の中から孤立していく。

描き切れていない「晩年の隠遁と孤独」

   2010年に91歳でサリンジャーが亡くなったというニュースが流れたとき、世間は「まだ生きていたんだ」と驚いた。それくらいサリンジャーの隠居生活は長く、晩年は一切作品を発表せず、表に姿を見せることはなかった。

   この映画は書籍「サリンジャー 生涯91年の真実」を元に脚本が書かれている。膨大な資料に基づいた原作に支えられ、戦争がサリンジャーに及ぼした影響や、「ライ麦畑でつかまえて」の発表までの葛藤、成功をつかみとってからの苦悩など、知られざる一面を描くという点では成功している。小説に思い入れのある人は、グッとくるシーンがたくさんあるだろう。

   しかし、映画全体としては、エピソードの羅列の域を出ていない。描かれる苦悩も作家としての苦労であり、ひとりの人間の苦悩として昇華できていないのだ。家族や友人などにも距離を置くサリンジャーの孤独を「孤高の天才」として単純に描いたのは残念である。

   晩年の少ない交流こそテーマだったのではないか。伝記映画の限界ともいえるが、サリンジャーを人間として見つめ直すという作業がもう少し必要だったように思う。

   映画だけで楽しむより、サリンジャー作品を読みながら楽しむのがいいかもしれない。作品の生まれる瞬間に立ち会うという映画ならではの疑似体験はできるので、サリンジャー作品への架け橋として見るならば非常に優れた映画である。(配給ファントム・フィルム 提供ファントム・フィルム、/カルチュア・パブリッシャー 全国公開中)

シャーク野崎

おススメ度☆☆☆

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