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<日本ボロ宿紀行>(テレビ東京系)
売れない歌手とマネージャーの貧乏ドサ回り旅!ボロ宿楽しむ深川麻衣、及び腰の高橋和也が楽しそう

   2週間前、芸能事務所の社長をしていた父が他界した。父の遺した事務所を守ろうとする一人娘の春子(深川麻衣)だったが、所属タレントは次々と事務所移籍や引退を決め、残ったのは20年前の一発屋歌手・桜庭(高橋和也)だけだった。

   その桜庭も逃げ腰だが、春子は父の生きた証である桜庭のCD在庫を売り切るまではと、桜庭と片道切符の営業ドサまわり旅に出る。

夕食はフード自販機でホットサンドやカツ丼

   営業先で酔っ払いに「へたくそ」とからかわれると逆上してしまうなど、二人の旅は前途多難。当然、おカネはないので、宿は「ボロ宿」だ。しかし、春子流に言えば、「ボロ宿―それは決して悪口ではない。歴史的価値のある古い宿から驚くような安い宿までを、ひっくるめ、愛情をこめてボロ宿と呼ぶのである」

   床のシミ、レトロなプラスティック電話、スポンジのはみ出たマットレスなどを嬉々としてスマホに収めて悦に入る春子と、ずっとボロ宿に引き気味の桜庭のコントラストが小気味よい。

   夕食はというと、ズラリと並んだフード自販機の前で春子がにっこり、「今夜はここでディナーです」と宣言する。不満たらたらの桜庭を説き伏せ、昭和の香り漂う、ホットスナックの自販機に舌鼓を打つ。

   アルミホイルに包まれ、しっかり焦げ目のついた薄いハムとチーズ入りのホットサンド。炒り卵とグリンピースと一緒にカツが飛び出すカツ丼。本物を見たことはないのだけれど、「懐かしい」という気持ちが不思議と巻き起こる。

入浴シーンも見どころだけど・・・

   見知らぬカップルに声をかけられた二人は、「売れない歌手とマネージャーです」と自分たちを説明し、「良ければCDあるんでいかがですか」と前のめりに営業するが、カップルは哀れみと困惑の表情だ。

   それを見た桜庭が、みっともない営業はやめてくれと怒り出す。目の前で自分の商品価値のなさを見せつけられる桜庭の気持ちは痛いほどわかるが、「そのプライドの高さが邪魔だ」「過去の栄光にしがみつくなら今すぐやめてくれ」と啖呵を切る春子に、桜庭は思わず「オッサンのポテンシャルをなめんなよ」と切り返す。こうして、デコボココンビの夢追い旅は進んでいく。

   元乃木坂46の深川の嫌味のない可愛さと芯の強さを感じさせる好演が目立つ。入浴シーンもサービスカットというよりは、きちんと物語として必要だから組み込まれたという印象を受ける。そして、一番のポイントであるボロ宿を「見せる」という試み自体も面白い。

   主題歌の声のエモさも企画にピッタリはまっているし、全体でしっかりノスタルジーを作り込んでいく感じがたまんないなあ。

   登場するぼろ宿はすべて実在していて、これから鍵になるのは、「レトロ可愛い」にとどまらない「ガチのボロさ」で、どこまで郷愁として魅力的に撮れるかだろう。次回以降に期待がかかる。(金曜深夜0時52分)

    ばんふぅ