2019年 8月 22日 (木)

「北方領土返還」安倍首相の独り相撲――プーチン大統領の腹は「平和条約+歯舞・色丹買い取り」

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   2月7日は「北方領土の日」。都内で開かれた4島返還を求める全国大会で、安倍首相は「相互に受け入れ可能な解決策を見出して・・・平和条約を締結する基本方針のもと交渉を」と述べ、従来の「4島の帰属を解決して」という言葉を使わなかった。硬化しているロシア世論への配慮。日本の置かれた厳しい立場を表していた。

   安倍首相とプーチン大統領は、昨年11月(2018年)にシンガポールで会談し、平和条約交渉を加速させることで合意した。「条約締結後、歯舞、色丹を引き渡す」とした1956年の日ソ共同宣言を交渉の基礎とする、という内容だった。しかし、先月(2019年1月)に行われたモスクワでの会談では、両者の立場の違いが改めて浮き彫りになり、具体的な進展はなかった。

   ロシア側の空気は尖っている。モスクワでは「返還反対」のデモが起こり、政権内でも慎重論が強い。政府高官は「大統領は平和条約で歴史に名を残したいと思っているが、側近は交渉に反対している。難しい問題になっている」という。

   現地の経済開発も日本抜きで着々と進む。色丹島を訪れたNHKのロシア人スタッフがその様子を伝えた。最大企業のギドロストロイ社(色丹島)は、60億円をかけて最新設備の工場を建設中だった。スケトウダラの加工品を中国、韓国に輸出して、ロシア第2の水産会社に成長した。アジア、ヨーロッパからの技術者の姿もあった。

   製品管理の男性の給与は他の地域の3倍。「病院、幼稚園、住宅もでき、会社も成長している。一生ここで働きたい」という。サハリン州の経済発展相は「ともに利益が得られるならどの国でも歓迎だ。日本に頼らなくても、発展できる」と話す。これでは日ロの経済協力が形にならないのも道理だ。

「戦勝で得たロシア領。返還ではなくプレゼント」

   歴史認識のズレもそのままだ。「日本固有の領土」という日本の主張をロシアは認めない。色丹島の学校では「クリル諸島(北方領土)は戦勝国としてロシアが正当に得た領土だ」と教えていた。

   NHKモスクワ支局の松尾寛記者は「共同宣言でも、『(返還ではなく)引き渡す』と言っています。4島は戦争の結果ロシアに帰属したと日本が認めるのが大前提というわけです。日本がどこまで真剣かを見極めようとしています。つまり、ボールは日本側にあるんです」と解説する。「引き渡す」ということは、タダではないぞということだろう。

   NHK政治部の岩田明子記者は、安倍首相は6月のG20サミット(大阪)までに条約の大枠を固めたいところだったが、可能性は遠のいたと伝えた。プーチン大統領は返還した島への米軍駐留を懸念しているが、ここへきて話がさらにややこしくなった。アメリカのトランプ大統領は米ソのINF(中距離核)全廃条約の破棄を通告し、安倍首相がこれを支持したからだ。米ロの対立がエスカレートすれば、北方領土交渉にも影響はあろう。

   岩田記者は「双方の国民が諸手を挙げて歓迎するような解決策は、もはや難しいでしょう。引き分けに持ち込める知恵を出せるかどうかです」と分析した。

文   ヤンヤン
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