2019年 11月 18日 (月)

あなたは何点?「個人格付」で就職、結婚、病院予約、ローン金利、子どもの進学・・・ウム言わせぬ差別

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   その人がどれだけ信用できるかを点数化する「ゴマ信用」と呼ばれるシステムが、中国で広まっている。中国最大のネット通販会社「アリババ」が推進しているもので、現在7億人が格付けされ、この数値によって恋愛やビジネスまで左右される。

   アリババのジャック・マー会長は2017年の世界経済フォーラムで、「ゴマ信用が社会を根底から変える」と断言し、「将来、女性の母親は『うちの娘と付き合いたいなら、君のゴマ信用の点数を見せてごらん』と言うでしょう」と話した。

   中国はマー会長の予言どおりに動いているといってもいい。杭州で飲料水の販売会社を経営する40歳の女性は、15年前に専門学校を卒業して会社を設立した。借金に頼らない堅実な経営を続けてきたこともあり、彼女のゴマ信用は高い。最近、家賃の高い新オフィスに引っ越せたのは、彼女の高いゴマ信用に目を付けたビルオーナーが、彼女を現実的で誠実と判断して出世払いで貸してくれたからだ。

   南京の25歳の女性は婚活サイトで交際相手を探すとき、「信用の点数は人格そのものなので重視している」と話す。連絡を取り合った男性は、ゴマ信用の点数で選んでいた。

中国アリババ「ゴマ信用」は5段階評価

   ゴマ信用の点数は、買い物履歴、金融ローンの支払い、学歴、人脈など、個人のゴマ粒のような細かな情報をAIが分析して決まる。950点満点で、350~500点は「やや劣る」、500~600点が「普通」、600~650点は「良好」、650~700点が「優秀」、700点以上は「大変よい」と5段階で評価され、点数次第でアリババ提携企業からさまざまなサービスが受けられる。

   たとえば、ゴマ信用550点以上は街中の携帯充電器が無料で使え、それ以上になると病院の予約が優先されたり、ローン金利も低く優遇される。アリババにとっては、金払いのいい消費者を絞り込み、効率的にセールスや取り引きができるというわけなのだ。

   こうした信用の数値化が中国で受け入れられてきた背景には、政府有力者のコネや裏金が横行する縁故社会のため、個人を評価する客観的で公平な基準が求められたからだと、杭州師範大学の曹明富教授は言っている。

   ゲストの慶應義塾大学・宮田裕章教授は「個人の格付けによる新しい管理社会の到来という批判はもっともですが、ごみ分別などの善行によってスコアが上がる仕組みが始まっており、その数字が子どもの進学にも影響を与えるとなれば、今後、お金を超える価値になるかもしれません。お金で回った資本主義から、信用で回る社会が来るかもしれないという点に注目したい」と話した。

   一方、慶應義塾大学法科大学院の山本龍彦教授は警鐘を鳴らす。「スコアをベースにした新たな身分制度になりかねません。(個人格付けが)負のスパイラルを起こす可能性があります」

日本でもみずほ銀行・ソフトバンクが「J.Score(ジェイ・スコア)」

   日本でも1年半前から、みずほ銀行とソフトバンクが、AIによるスコアを使った金融事業「J.Score(ジェイ・スコア)」を始めている。さまざまな質問に答えさせ、スコアに応じてローンの金利を決める。すでに40万人が登録していて、スコアがよければ低金利で融資され、融資する側も貸倒率がこれまでの半分以下になったという。

   J.Scoreの大森隆一郎社長はこう説明する。「今のところスコアの利用を結婚や就職など、その人の人生に関わるサービスにまで広げる予定はありません。スコアが格付け的に使われるなど、使い方を誤ると変な方向に進むリスクがありますからね」

   中国政府も日常の振る舞いで国民一人一人を格付けするようになっており、公共の秩序を乱す行為を行った2000万人以上が、高速鉄道や航空機の利用を禁止されている。信用度が低い人は、ネット上で名前とIDが公表される。

   山本教授は「監視カメラと格付けが結び付くと、政府へのデモなど国民の表現活動が委縮する可能性があります」と指摘した。

   宮田教授はこう提案する。「データの時代は大きな転換期にあります。アメリカは企業が、中国では政府が主導していますが、EUでは個人を軸にデータを使うというルールが提案されています。ただ、個人の同意を個別にとると、経済が止まってしまいます。自分のデータがどのように使われるか、説明を受ける権利も必要になってくるはずです」

NHKクローズアップ現代+(2019年2月12日放送「個人情報格付け社会~恋も金回りもスコア次第!?~」)

文   バルバス
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