<ピアノの森>(NHK総合)
原作漫画にはない世界・・・アニメだから聴ける一ノ瀬海が奏でるショパンの美しい旋律
森に捨てられていたピアノをおもちゃがわりに弾いて楽しんでいた一ノ瀬海が、そのピアノのかつての持ち主で、けがでピアノを弾くことをあきらめ、いまは海の小学校で教師をしている天才ピアニスト阿字野壮介、転校してきた日本を代表するピアニストの息子、雨宮修平と出会い、やがてショパン・コンクールに出場するアニメ物語だ。一色まことの同名漫画が原作。
才能以外はなにも持っていない海のふつうの男の子キャラクターは、魅力的で、つい応援したくなってしまう。ショパンコンクールでは本選へと進み、ここで森の中で好き勝手に弾いて経験が生きて、「ポーランドの自然」をごくナチュラルに表現し、コンクール会場にいる地元のポーランド人から喝さいを浴びる。
しかし、海が日本人で、正統派でないため審査員はおもしろくない。本戦へ進めなかった雨宮の葛藤なども丁寧に描かれ、「コンクールもののあるある」と思いつつも物語に引き込まれる。
海のピアノ演奏者だれ?
原作の漫画では不可能な、アニメならではの最大の魅力は、コンテスタントが演奏するショパンの音楽である。これぞ真の主役。美しい旋律がずっと奏でられ、どれほどめざすものが遥か高いところにあり、厳しい闘いなのかがリアルに伝わる。
阿字野、雨宮ほか外国のコンクール出演者のピアノを担当しているピアニストの名前は発表されているのだが、主人公の海だけは秘密。クラシック・ファンには「いったい誰が弾いてるの?」と想像が膨らむ。海は優勝できるのか。物語はいよいよクライマックスへと向かう。(日曜深夜0時10分)
かたくりこ