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「アポ電強盗」オレオレ見破ったら襲われた!東京都内では1日に200件近い下見の電話

   家に現金がいくらあるかを聞き出したあと、強盗に押し入る「アポ電強盗」の被害が相次いでいる。警視庁によると、今年(2019年)に入ってから都内のアポ電通報件数は3万4658件、放送のあった4月23日だけで198件もあった。

   渋谷区では2月に歯科医の息子がいる70代の女性が狙われた。息子になりすました男から電話がかかり、「患者にレントゲンを間違えてしまった。数百万円かかる」という作り話で現金がいくら置いてあるかを聞きだし、2日後に家に押し入られた。

   インターホンのカメラを隠してチャイムを鳴らし、警察を名乗って「猫が死んでいるので玄関を開けるように」と指示し、女性がドアを開けた途端に賊がなだれ込み、400万円を奪った。

   大阪府門真市の77歳の男性は、去年8月(2018年)に振り込め詐欺の電話を見破っていたのに被害にあった。金融庁を名乗って振り込め詐欺の連絡があったといい、その1か月後に強盗に押し入られ、現金を奪われ、同居の女性は足に大けがを負った。

知能犯の詐欺グループとは違う凶悪犯

   犯行が暴力化している背景には、オレオレなどの特殊詐欺の取り締まりが厳しくなり、「受け子」のなり手が減っていることがあげられる。高額な報酬をエサにツイッターなどSNSで募集を行い、詐欺グループとは違う人物がかかわるケースが増加しているという。

   捕まったアポ電強盗グループの容疑者は、「明らかにチンピラみたいな人間。タタキ(強盗)なんかやっていると感覚がマヒして、人を傷つけることに抵抗感がなくなってくる」と供述した。江東区で高齢女性を襲ったアポ電強盗の末端メンバーは、地元で「大金が手に入る。少なくとも500万、多くて2000万円」と触れ回っていた。

   NHK社会部の間野まりえ記者は、「海外に電話をかける拠点を置くなど、詐欺グループの手口が巧妙化、組織化するなかで、暴力化したグループが現れ、アポ電強盗などに及んでいます。詐欺の電話だと見抜いても、襲われます」と話す。詐欺のノウハウを持った新たな強盗団というわけだ。

   振り込め詐欺で逮捕された男は、「お年寄りのリストがあって、名簿を見て電話して、銀行預金かタンス預金かを聞く。タンス預金なら強盗に入ればいい」とうそぶく。

電話が鳴ったらアポ電を疑え!お金の話はするな!

   江東区の事件では、犯人グループは被害者宅に週3日ホームヘルパーが来ることも把握しており、合間の時間を狙って犯行に及んだ。下見の様子も防犯カメラに写っていた。狙った家の近所にアパートを借りたり、探偵を雇ったり、生命保険の営業を装って、生活実態や勤め先、家族の名前、出身校も聞きだしていた。

   摘発された詐欺グループの拠点からは、さまざま名簿が押収されている。そうした名簿類は名簿業者やインターネット上で販売されている。高級マンション購入者や不動産投資家、金融商品投資家のリストなど、出回るはずのない名簿も売買され、携帯電話番号、投資金額、予定投資額などの個人情報が記載されていた。企業などから流出したとみられ、個人情報が持ち込まれたものだという。詐欺グループが聞き出した「家に現金がある」という情報まで売買されている。

   85歳の女性から1億円を強奪して逮捕され、服役中の30代の男は「振り込め詐欺は失敗したが、1億円を自宅に持っているという情報を買った男に、成功報酬1割(1000万円)と誘われて犯行に加わった」と自白した。

   アポ電強盗被害に合わないためにはどうしたらいいのか。合原明子キャスターは注意を呼び掛ける。「電話が鳴ったらアポ電を疑うという危機感を持つことが大切です。知らない番号からの電話には出ない、怪しい電話は切る、現金の有無など自分の情報は話さないことです」

*NHKクローズアップ現代+(2019年4月23日放送「徹底追跡!"アポ電強盗"本当の怖さ」)