2019年 6月 18日 (火)

百田尚樹の正体見たり!間違いもコピペも何でもやる「売れない本は本じゃない」

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   ニューズウイーク日本版が「日本を席巻する『百田尚樹現象』」という20ページの大特集を組んでいる。日本を席巻するとは大仰だが、書いたはノンフィクション・ライターの石戸諭。毎日新聞で10年ほど記者をやっていたというから、日本では数少ないリベラル派のようだ。

   百田の本を全部読み、見城徹幻冬舎社長にもインタビューしている。ここでも何度か書いたが、百田は、タレントで歌手のやしきたかじんが亡くなった後、直前にやしきと結婚した女とのことを『殉愛』とタイトルをつけ、「純愛ノンフィクション」と謳って幻冬舎から出した。

   ところが、その内容たるや、女のいい分だけで構成され、女が悪口をいっているたかじんの長女や元マネージャーのいい分などまったく取材しない、ノンフィクションとは程遠い駄本だった。長女も元マネージャーも百田と幻冬舎を相手取り訴えを起こした。結果、百田も幻冬舎も敗訴した。

   元マネージャーは『純愛』出版後、社会的な信用を失い、芸能界での職を得ることもできず、家族共々、大阪から東京へ引っ越しを余儀なくされてしまったという。石戸のいうように、表現は相手の生活を壊すこともできるのである。

   この裁判を傍聴したノンフィクション作家の角岡伸彦が、百田が法廷でこう語ったという。「確かに、書き方については、もっとこうしたらよかったという思いはありますが、仕方ない。書いてしまったんやから」

   石戸に対して、見城徹はこう答えている。「名誉棄損については申し訳なかったが、出すべきだと判断したということです。これ以上言うことはない。僕は作家の側に立つ。危険だからやめようと言うことはできた。でも、作家が熱を込めて書いたもの。うちのために書いてくれたのだから訴訟に負けても、作家の側に立つという決断をした」

   このインタビューは、百田の『日本国紀』を批判した作家の津原泰水の文庫本を、出版直前に出さないと幻冬舎側が津原に通告し、その上、見城は自身のツイッターで、津原の作品はこれしか売れなかったと実売部数を公表するという、出版人にあるまじき愚行をする前に行われた。

   彼にとって売れない作家など守る必要はないが、売れる作家なら身を挺してでも守るという身勝手なものなのだ。

   石戸は、百田人気をこう分析する。<中韓に「怒り」を爆発させ、朝日新聞という大マスコミを批判する言葉は、非マイノリティポリティクスと相性が良い。マジョリティーである「ごく普通の人」は多かれ少なかれ、中韓への違和感や疑義を持って、生活している。百田の言葉は「ごく普通の人の感覚」の延長線上にあるのではないか、と>

   百田はトリックスターと表されたことがあり、これがいたく気に入っているそうだ。<彼の自己認識はこれに近いのではないか。読者の支持がなくなればそれで終わり。物議を醸す発言も自分が思うことを言っているだけで、自分の考えに染めてやろうとは思っていない>(同)

   インタビューで『日本国紀』を書いたことについて百田はこう答えている。<「そうですね、学術的なものではないです。僕が日本という国の物語を面白く書いた、という本です。民族には物語が必要です。日本には素晴らしい物語があるのに、これまで誰も語ってこなかった。歴史的事実を淡々と書いたところで、それは箇条書きと同じです。

   僕は歴史で大切なのは解釈だと思っています。事実は曲げられませんから、事実に基づき、史料と史料の間を想像力で埋めて書いたのが、僕の解釈による通史です。日本の歴史をこうあるべき、なんて思うことはないですね>

   南京虐殺があったことは安倍首相でも認めているのに、百田は否定している。歴史修正主義者ではないのかと聞かれ、<「僕は歴史修正主義者でもなんでもありませんよ。それまで事実をねじ曲げてきたことが歴史修正であり、私は『日本国紀』で普通の歴史的事実を書いています。南京大虐殺があった、日本軍の強制による従軍慰安婦がいた、というほうが『歴史修正』だと思いますよ。それらに物的証拠、史料的証拠はありますか?」>

「南京大虐殺や従軍慰安婦こそ歴史のねじ曲げでしょう」

   百田にとって事実かどうかは関心の外にあるようだ。百田の本の書き方はトランプの手法と似ていると思う。極論を吐いて、3割の人間が支持してくれれば、大統領にもなれるしベストセラー作家にもなれる。<「売れることが一番大事。そのためにやっています。売れなくてもいいならブログに書いていたらいい。僕の本で、編集者、製本会社、書店、営業・・・。多くの人がご飯を食べているんです。売れなくてもいいから本を出そうとは思いません」>

   また百田はこうもいう。<「僕は小説家なので、政治について何かを書いて、お金をもらうという意識はありませんでした。でも、言えるツールを見つけましたね。それがツイッターです。ツイッターなら原稿料ももらっていませんから、自分の好きなことがいえます」>

   この男にとって、面白いこと、売れることが最大関心事で、間違いやコピペなど大したことではないのだ。見城社長にとっても売れる作品がいい作品で、売れなければ内容がよくてもクソなのだ。

   先日、日本推理作家協会賞を受賞した葉真中顕の『凍てつく太陽』を買おうとして、発行元が幻冬舎なので躊躇した(結局買ったのだが)。その葉真中が贈呈式で、見城がツイッター上で実売を公表したことに対して、「非常に問題があるということについては、同じ思いの方が多いと思う」と批判した。当然である。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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