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ついつい食べ過ぎ・・・原因は第6の味覚「脂肪味」の鈍感だった!脂っこい食事で脳が麻痺

   人間の舌には、甘味、塩味などのほかに、第6の味覚「脂肪味」があることを、昨年(2018年)、九州大学の研究グループが解明した。鈍感だと脂肪をとりすぎて、生活習慣病のリスクが高まる。

   舌には味蕾(みらい)という、味を感じて脳に伝える器官がある。甘味なら糖、塩味はミネラル、うま味はタンパク質など、それぞれが口の中に入ったことがわかると、脳の指示で消化器官が対応を始める。甘味を感じれば、インスリンが分泌されて血糖値の上昇を抑えるという具合だ。

   この感度が鈍いと、どれだけ入ったかわかららず、摂取しすぎてしまう。つまり、食べすぎ。こうした味覚の中でも、脂肪味は「ほかの味覚よりも圧倒的にパワーがある」と、フランス料理のシェフ、三國清三さんはいう。

   三國清三シェフ「バランス良い食事で味覚は鍛えられます」

   クロ現プラスが20歳代から50歳代の男女30人に、脂肪の一種オレイン酸で実験をした。濃度の違う溶液を味わい、感じられるかどうかで脂肪味を超敏感から超鈍感までの5段階にランク分けすると、10人が「やや鈍感」以下だった。

   なぜ個人差ができるのか。東京歯科大の安松啓子准教授は「いかに続けて脂肪分をとっているかが分かれ目で、食べ続けると鈍感になります」と説明する。舌の脂肪味感覚が衰え、脳も脂肪味に慣れてしまって感度が鈍るそうだ。

   味蕾は10日ほどで生まれ変わるといわれるが、実験で「鈍感」と判定された9人に、10日間の食事改善に取り組んでもらった。揚げ物をやめて焼き物や蒸し物を中心に、ラーメンを食べずにうどんやそば、ケーキでなく和菓子やせんべいにする。再テストすると、3人が「敏感」になっていた。

   「栄養がバランスよく配合された自然の食べ物をとると、味覚が鍛えられます」と三國シェフはアドバイスした。東北大学の笹野高嗣名誉教授も「味覚は日常生活の中で変わります。ジャンクフードばかりを日ごろからとっていたら、気づいた時には味覚障害が進んでいます」と注意を呼びかける。

   病院でも味覚改善で生活習慣病を治療

   鳥取県米子市の山陰労災病院は、味覚の改善を治療に活用している。慢性腎不全患者の木村勝敏さん(63)は塩味が鈍り、塩分の強いものばかりを食べていた。水も多く摂取するため腎臓に負担がかかり、老廃物を排出できない状態だった。9日間入院し、1日に塩分6グラムの減塩食治療を受けた。当初は味を感じなかったが、退院前日には「ハクサイなどの味がわかり、(塩なしでも)十分に食べられるようになった」という。腎臓のデータも改善した。

   水田栄之助医師は「味の感度の鈍い人は、野菜の摂取が少ないですね。うま味が鈍いと、甘党、肥満の傾向があることもわかってきました。日常診療のヒントになります」と話す。この病院では、高血圧や心筋梗塞患者にも味覚改善を取り入れている。

   武田真一キャスター「しっかり味わって食べ、体に栄養を受け入れる準備をさせること、正常な味覚を保つためには日々の食生活が重要ですね」

   *NHKクローズアップ現代+(2019年6月13日放送「」あなたは"脂肪味"を感じますか?最新研究!味覚が健康を左右する)