<長閑の庭>(NHK BSプレミアム)
橋本愛の芝居の巧さに感服!「いだてん」の下町おきゃんと対照的な純情大学院生もまたチャーミング
久々に上質なラブストーリーを堪能させてもらった。
ドイツ文学を専攻する23歳の大学院生が、40歳も年の離れた大学教授に思いを募らせ、「恋とはなにか」を哲学的に考え、答えを模索するものだ。ヒロイン・元子を演じるのは橋本愛。彼女はいつも黒い服を着ていることから、シュバイツさん(ドイツ語で黒のこと)と呼ばれている。
人と接するのが苦手で、恋愛経験もゼロ。本当は可愛いものが好きな女の子なのだが、自分には似合わないと決めつけ、黒い服しか着ない元子は、ゼミの飲み会などでも所在なげである。いまどきの学生たちの中では確実に浮いた存在だ。
田中泯の教授 ちょっと老けすぎじゃないか
そういう自分を直したいと思っている元子を、教授はこう諭す。「自分の人生は他人に合わせたり、他人に評価されるために存在しているのではないのだから、自分の価値観を大切にすべきだと私は思う。それに、それは君の良さでもあるんじゃないかな」
さらに、「君の論文には実直さが感じられる。でも、それだけじゃない。キラリと光るユーモアがあって、君の日本語は美しい」とも言う。自分という存在を認め、褒めてくれた教授に恋心を抱くのは当然か。押さえきれなくなって、秘めたる思いをぶつけたが、「それは恋ではない」と否定されてしまう――というストーリーだ。
橋本愛は朝ドラ「あまちゃん」のユイちゃん、そして、大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」では、きっぷのいい江戸下町の遊女・小梅を演じているが、チャキチャキな小梅と元子のギャップが凄く、どちらもチャーミングで、あらためて巧い女優さんだなと感心した。
榊教授を演じるのは田中泯。原作を読んだ時に想像していたのは、もう少し若いイメージだったが、今の60代の俳優で、威厳のあるドイツ文学の教授に相応しい人がいるかと言えば、なかなか難しい。適度に枯れた雰囲気を出せるかと求めれば、それも微妙だ。そう考えると田中でよかったと考えるべきだろう。寡黙で威厳のある感じは、田中でしか出せなかったと思う。