朝メシを喰いながら、フフジテレビ系の朝の情報番組「とくダネ!」とテレビ朝日系の「モーニングショー」(以下『モーニング』)を交互に聞いている。「モーニング」は玉川徹という局の人間が時々鋭い突っ込みをするという評判だが、7月23日(2019年7月)の放送を聞いていて、思わず飯茶碗を落としそうになった。
週刊新潮が先週報じた石崎徹代議士の暴力問題を取り上げたのだが、司会の羽鳥慎一アナは、自分たちの取材で先ほどわかったかのようにいったのである。おいおい、お前のところの取材じゃなくて、週刊新潮を読んだんだろ。なぜ、先週取り上げなかったんだ。
理由はハッキリしている。参議院選中だったから「自民党に忖度」したのだ。選挙期間中は、どの政党も公平に扱わなくてはいけないという倫理規定に縛られているからだが、ニューズウイーク日本版で、山田健太専修大学教授がこう話している。
<公選法の本則には、選挙報道の「自由を妨げるものではない」と書かれている。「公正を害してはいけない」とあるのは、但し書きのほうだ。わざわざ選挙報道は自由です、と定めているにもかかわらず、なんとなく公正さを担保しましょう、という但し書きのほうがメインになってしまっている>
公正な報道という主観的なものを、候補者から文句をいわれないために、「数量公平」、つまり、どこの政党も同じ時間にすれば公平だと、易きに付いてしまうからだ。
そのため、山本太郎の「れいわ新撰組」のように、有権者の注目を集め、比例で2人も当選させた党を「泡沫候補」扱いにして報じないということが起きる。「モーニング」は25日に山本太郎をスタジオに呼んだが、選挙中にどれほど「れいわ」を取り上げたのだろう。「モーニング」は他局に比べれば、政権批判のようなものをやっている"フリ"をしているかもしれないが、私には同じ穴の狢に見える。
玉川徹は、ジャニーズ事務所の圧力問題で「テレ朝が一番忖度しているはずだと思う。誰か証言する人間はいないのか」といったのだろうか。その石崎代議士は参院選中は姿を消していたが、同じ新潟で今回選挙に出ていた現職の塚田一郎を落選させるほどの影響力を発揮したと週刊新潮が報じている。
塚田は「忖度発言」もあったが、安倍、菅、小泉進次郎が応援に駆け付け、田中角栄以来連続当選してきている保守王国新潟を守れるかと思われていた。そこに石崎スキャンダルが直撃したのである。4%の僅差で敗れ去った。
元秘書が新潟県警に被害届を提出。週刊新潮では、さらに5人の元秘書らが「僕も暴行を受けた」「拳で殴られた」「制汗スプレーを投げつけられた」「戸別訪問で断られると、"なんだよこの家、死んじまえよ"」「はっきり言って、人間のクズ」だと、石崎の秘書虐待を証言している。
週刊文春では、石崎を教えた東欧出身の美人英語教師が、英語はそっちのけで、「ホテルでセックスしたい」「15万円でどうか?」ということばかりで、「娼婦のように扱われた。許せない」と憤っている。
提訴した元秘書は、1億円、2億円を積まれても示談はしないといっているし、選挙が終わったから、県警も動き出し、石崎を任意で聴取するといわれている。石崎が議員バッチを外すのもそう遠い話ではないのではないか。
今週もフライデーは入江慎也や宮迫博之と詐欺グループとの問題を追及している。今回は、吉本興業本体が、高齢者からだまし取ったカネだと知って受け取っていたのではないかという新たな"疑惑"についてだ。
入江主催のイベントが東京・新木場のライブスペースを貸し切って行われたのは2014年の5月30日だったという。多数の一般客が参加して盛り上がったようだが、このイベントには先の特殊詐欺グループが経営するダミー会社が、スポンサーとして参加していたというのである。
金額も600万円とけた違いに大きかったから、当日は超ビップ待遇だったと、詐欺グループの元メンバーが語っている。そのイベントには参加芸人たちのマネージャーとして、吉本の社員も4人ほど来ていたという。イベントの運営会社は、600万円のうち50万円を吉本興業に払ったと証言している。
フライデーはしつこいぞ。宮迫と一緒に写真を撮った金塊強奪犯で、現在は獄にいる野口和樹被告に面会に行き、直撃インタビューしているのである。野口は開口一番、「自分のプライベートの写真が勝手に載せられたことは腹立たしい気持ちです」と記者に詰め寄ってきたという。
宮迫は会見で、この写真は「トイレから出てきたところで無理やり撮影された」と反論している。野口は、宮迫とはどのような関係かと聞かれて、「お答えできません」
宮迫と写っていたのは野口さんですね?
「写真に写っていること自体は否定しないです」
宮迫は無理やり撮られたといっているが?
「無理やり自分たちの席に連れて来たとは思っていません。写真だけでなく、一緒に乾杯してシャンパンを飲んだ記憶があります」
その時の野口さんの格好は?
「半袖を着ていて、入れ墨ははっきり見えていたと思います。写真を撮るときだけ腕にサポーターをつけました」
同席者が宮迫に現ナマを渡していたという目撃証言がありますが?
「それについては話せません」と
こんないうやり取りが書かれている。撮影された正確な日時は7月27日午前1時37分だそうである。
吉本興業は公正取引委員会から、口頭だけで、契約書を結ばないのはおかしいといわれて、急遽、望む芸人たちとは契約書を結ぶと、態度をコロッと変えた。この会社には一貫したビジョンなどないことが、これでよくわかる。
大崎会長が胸を張ってやってきたことが真っ向から否定されたのだから、ここ、岡本社長と一緒に潔く身を引いたらどうか。宮迫と田村亮は吉本興業を離れて、しばらく謹慎した後、一本立ちすればいいと思う。
同じように、公取委から、SMAPを離れ独立した3人に対して、テレビ局へ出さないよう圧力をかけたのではないかと注意されたジャニーズ事務所の問題は、どうなっているのだろう。週刊文春がこの問題について、NHKはかなり突っ込んだ報道をしていたが<この期に及んでも"忖度"の姿勢を崩さなかったのが、かねてから"圧力"を受けていたフジテレビとテレビ朝日だった>(週刊文春)というのだ。
<「実は編成部から解説やコメントを控えるように通達があり、その後も「ひと番組につき、取り上げるのは一度きり、コメントなし」という条件が課せられたのです」>と語るのはフジの情報番組関係者。
テレビ朝日の看板報道番組「報道ステーション」は驚くことに、17日以降、一度もこの問題を取り上げていないというのである。テレビ朝日関係者は<「テレビ朝日もフジと同様、公取委の調査の対象だったのです」>と話している。
3人がジャニーズ事務所を退所して元マネージャーの飯島三智が代表を務める「CULEN」に所属した翌日、香取慎吾が16年も司会を務めてきたテレ朝の「SmaSTATION!!」が、香取にも知らせずに番組終了になった。
後の会見で、テレ朝の早河洋会長は、番組終了を個人に通知することはないと突き放したいい方をしたそうである。安倍首相にもジャニーズ事務所にも"忖度"するといわれている人間だから、こんなことは朝飯前なのだろう。
では、どのような形で、ジャニーズ事務所はテレビ局に圧力をかけるのだろう。週刊文春によれば、かつて嵐のチーフマネージャーだったAという男性社員が、その役割を担っているそうだ。主にテレビ局との交渉やキャスティングを担当しているそうだが、陰で「ジャニーズの門番」といわれているようだ。
<ある局の幹部は、A氏から元SMAPの三人を取り上げた番組や尺の長さをリストにしたものを提示され、「なぜこうなったのか?」と追及されたこともあったという>(週刊文春)
ジャニー喜多川が亡くなって、事務所の求心力が落ちていくことは間違いない。それでもまだテレビ局が事務所側のいいなりになり、声一つ上げられないようでは、ジャーナリズムの看板を下ろすべきである。
最近の週刊現代も相当恥ずかしい。モノクログラビアページで「正力松太郎原子力と巨人を作った男」という特集を組んだ。その最後のページで、信じられないミスをしたのである。
広島東洋カープが悲願の日本一になった1979年、長年野球に貢献してきた正力の「遺影」を掲げる選手もいたとキャプションで書いたが、遺影はなんとカープの熱烈なファンだった作家・梶山季之なのである。梶山はルポライターの生みの親のような人である。
読売の人間も驚いただろう。読売では神様のように崇められている正力が、髪ふさふさの梶山になるとは。d-マガジンでは、そのページがキャプションを残して真っ黒になっている。
月3回刊という変則な刊行形態が、こうした大きな間違いを引き起こしたのではないか。心配だ。
心配だといえば、163キロを誇る佐々木朗希投手(3年)が、岩手大会の決勝戦に出場せず、大船渡高校は敗退して、甲子園に出られなかった。國保陽平監督は「どこかが痛いというわけではないが、故障の予防のため私が判断した。練習試合などと大会では負荷が違い、疲労は想像以上。この3年間の中で一番故障する可能性が高いと思った」(朝日新聞7月26日付)と語っている。
佐々木は「高校野球をやっている以上、試合に出たいのは当然のこと。投げたい気持ちはあった」(同)と答えている。
週刊文春によれば、この監督はアメリカの独立リーグを経験している32歳で、これまでも佐々木に対して、「まだ(自身の)球速に耐えられる身体ではない」と登板回数や球数に細心の注意を払ってきたという。
監督の試合後の口癖は、「きょうもケガなく終われて良かった」だそうだ。佐々木を甲子園で見たかったという地元や高校野球ファンにとっては残念な形で終わってしまったが、この決断は、佐々木にとって必ずいい方向に出ると思う。
暑さが40度を超える甲子園で何連投もすれば、どんなに肩の強い投手でも疲労がたまり、プロへ行ってから故障する選手が続出する。プロ野球のスカウトたちは、監督に感謝しなくてはいけない。私はこの決断を支持する。
この監督とは正反対といっては失礼だろうが、広島カープの緒方孝市監督(50)が、怠慢プレーをした野間峻祥を試合後に呼び出し、監督室で叱責したうえ、鉄拳制裁したことが是か非か、論議になっていると週刊新潮が報じている。
星野仙一の暴力はよく知られていた。野村克也は「暴力はいけないよ。野蛮だから。プロ野球だよ。話せばわかるじゃん」というが、私は、その選手のことを本当に思って怒り、殴るのはいいと思う。一番いけないのは、自分への怒りを他人に向ける身勝手な暴力である。
最後に、レアル・マドリードに移籍した久保建英の話。父親もサッカーをやっていたが、鳴かず飛ばずだったというが、息子・建英には2歳の頃から年間350日以上、公園でボールを蹴らせたという。それに、何百冊も絵本を買い込み、毎日読み聞かせしたそうだ。サッカーの送迎の時は宮沢賢治のCDを聴かせ、枕元では「三国志」や「水滸伝」のほかに戦国武将伝のあらすじを聞かせたそうだ。
個として判断するためには「知性」が、チームプレーのためにはコミュニケーション能力がいると考えてのことだという。天才は一夜にしてならずということである。(文中敬称略)