2019年 12月 9日 (月)

安倍首相の「お友達案件」になってきた吉本騒動―官民ファンドや大阪万博に手を突っ込む大崎洋会長は政商か

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   「ふりむくな うしろには夢がない ディープインパクトがいなくなっても すべてのレースは終わるわけじゃない 人生という名の競馬場には 次のレースをまちかまえている百万頭の名もないディープインパクトの群れが 朝焼けの中で追い切りをしている地響きが聞こえてくる」

   1975年、ハイセイコーが引退した時、寺山修司がつくった「さらばハイセイコー」を、ディープインパクトに変えてみた。歴史的な名馬が7月30日(2019年)早朝、17歳の若さで突然亡くなってしまった。寺山が生きていたらなんと歌うのだろう。

   武豊はディープの走りを「翼を広げて飛ぶがごとく」と評した。その名前のように、「強烈な印象」を競馬ファンに残して旅立った。引退レースとなった有馬記念の夜、西船橋の居酒屋で芋焼酎のお湯割りを3杯呑んだ。ディープの単勝で儲けたささやかな祝杯だった。

新規事業に「クールジャパン機構」から100億円出資

   吉本興業の芸人たちの闇営業問題は、この会社の前近代的な体質批判にまで広がっている。なかでも朝日新聞が熱心で、7月31日の朝刊では、芸人養成所(NSC)の合宿に参加を希望する研修生たちに、「合宿中の負傷、これに基づいた後遺症、あるいは死亡した場合、その原因を問わず吉本興業に対する責任の一切は免除されるものとする」と記された誓約書に署名するよう求めていたことを報じた。

   吉本側は、担当者が代わったために修正前の規約を渡してしまったなどと釈明しているが、これまでの吉本騒動報道を見ている限り、納得する人間はほとんどいないだろう。

   今週の週刊文春は、吉本のドンといわれる大崎洋会長が、政治家や官僚との付き合いを深め、ビジネスの幅を広げていることを報じている。財務省出身で民主党の衆院議員だった岸本周平は、吉本の経団連入りを仲介した。三重県知事だった北川正恭の元秘書は、現首相補佐官の衛藤晟一や菅官房長官を紹介。タレント・ヒロミの所属事務所の社長を介して萩生田光一官房副長官をというふうに、着々と政界人脈を築き上げていったという。

   もちろん、大阪の維新の会とは蜜月で、大阪万博ではダウンタウンがアンバサダーとしてオファーされ、維新の選挙応援に吉本の芸人が行くことも珍しくない。

   そうした中で、3年前には盛山正仁法務副大臣がなんばグランド花月に、今年の7月には山下貴司法務相が吉本新喜劇に登場し、その前の4月には、G20への協力を求めるためと謳って、安倍首相が吉本新喜劇に出演した。6月上旬には、西川きよしが新喜劇のメンバーを連れて官邸を表敬訪問している。

   まさに"政商"といってもいいのではないか。官邸肝入りで2013年に設立された官民ファンド「クールジャパン機構」との122億円にも及ぶ巨額ビジネスにも入り込んだというのである。経済産業省が所管するこの機構は、出資金693億円のうち政府出資金が586億円にもなるが、累積赤字が179億円にもなっていて、<「今回の"闇営業問題"を受け、吉本の泉正隆専務は『一連の事業にはすでに吉本も多額の資金を投じている。今後、百億円(NTTと組んだ教育コンテンツ等を国内外に発信する事業に、機構から最大で百億円の出資が見込まれている=筆者注)が入って来なければ、支払いが滞ってしまう可能性がある』と危機感を口にしていました」(芸能プロ関係者)>という。大崎ワンマン体制が大風呂敷を広げたはいいが、闇営業問題を始め、多くのほころびが目立つようになってきている。

   発端になった闇営業問題だが、フライデーが報じた宮迫博之と金塊強奪犯の野口和樹被告とのツーショット&ギャラ飲み疑惑を、宮迫は野口とは知らないで写真を撮らされただけだと弁明していたが、野口がフライデーに、写真を撮った後、「一緒に乾杯してシャンパンを飲んだ」と証言したため、宮迫は沈黙してしまう。

   闇営業問題をきっかけに勃発した吉本のお家騒動は、日頃から吉本に不満を抱いていた芸人たちから批判が噴出し、加藤浩次のように、「今の体制が続くなら吉本を辞める」といい出す者も出てきた。こうした非主流派と、松本興行といわれるほど大崎と親しい松本人志、吉本とは少し距離を置く明石家さんま、暴力団との付き合いで芸能界を引退した島田紳助までが登場してきて、山口組分裂のような様相を呈してきているのである。

   週刊新潮は、社説で吉本批判をする朝日新聞に向けて、「従軍慰安婦誤報」をした朝日新聞が偉そうにと、逆切れする始末。古手の芸人・西川のりおに加藤浩次批判をさせ、島田紳助は「俺の出番は終わったわ」といい、惜しまれて引退した上岡龍太郎の昔の「芸人ちゅうもんはなんや言うたら、落ちこぼれ人間ですよ。社会のはみ出しもん。アウトロー。いわば暴力団と一緒ですから」という言葉を引用し、山口組の組員と兄弟杯を交わし、暴力、不祥事を重ねても、芸人として愛され、51歳で亡くなった横山やすしを懐かしむ。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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