2019年 12月 12日 (木)

文在寅大統領 振り上げたこぶし下ろせない3つの理由「国家的自尊心」「積弊清算」「政権の求心力維持」

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   日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄するかどうかをめぐって、先週22日(2019年8月)、発表の3時間前のぎりぎりまで韓国のNSC(国家安全保障会議)は激しいやり取りが展開されたという。協定延長を主張する外交や国防の関係者ら4人、破棄を言い張る大統領側近3人が真っ向から対立していたのだ。

   クンミン大学のイ・ウォンドク教授は「外交関係者らが、米韓日の枠組みの中でアメリカへの影響を考えたのに対して、大統領側近は世論調査を行って、破棄支持が多かったことを主張しました」と解説する。最後は文在寅大統領が破棄を決断したという。

   アメリカは再三、協定延長を要請していた。ポンペイオ国務長官と河野外相との間でも「継続を念押ししてほしい」(河野)、「改めて伝えよう」(ポンペイオ)というやり取りがあった。アメリカも危機感を強めていた。クリスチャン・ウィトン元国務省顧問は「日米韓の安全保障を脅かす可能性があり、破棄で得するのは中国です」と指摘する。

   韓国はいま若者の失業問題や経済の低迷、大統領側近のスキャンダルで文大統領支持率が就任時の80%超えから半分近くまで低下している。「この局面をなんとかするために、安保政策を転換したとの見方があります」とイ教授は指摘する。

韓国企業も就活学生も「困った」

   破棄の理由に、NHKソウル支局長の高野洋記者は、徴用工問題などへの日本の反応に対する「国家的自尊心」、前政権が結んだ協定だという「積弊清算」、経済不振やスキャンダルの中での「政権の求心力維持」をあげた。「文大統領と側近は日米韓が連携して中国や北朝鮮に対抗するのは古い考えだとして、北朝鮮は融和のパートナーと位置づけています」という。

   日本政府にとっては、協定破棄は「予想外の対応で、一線を超えた」(NHK政治部の岩田明子記者)と映るのだ。ただし、破棄の影響は限定的で、それを裏打ちするように、トランプ米大統領も「韓国の行動は賢くない。北朝鮮に完全になめられている」と発言した。

   現状を打開する責任は韓国政府にあるというのが日本の立場だ。日本の商社には韓国の取引先から問い合わせが相次ぎ、「1日に何回も電話がある」というぐらい輸出入への心配が広がっている。韓国への輸出が海外売り上げの4分の1を占める電気機器メーカーは、取り引きが40%減った。韓国企業も日本から入れていた部品を他国からの輸入や独自の技術開発で切り換えようとしているが、思うようには進んでいない。日本企業への就職をめざす韓国人学生は、「今はニュースを見たくない。気持ちが揺らいでしまう」と深刻だ。

関係変化のきっかけになるか?「天皇即位式典」李洛淵首相来日

   元外務事務次官の佐々江賢一郎氏は「お互いに譲り合わずにクラッシュを繰り返すのをやめ、さまざまなレベルで対話を模索しないといけません。ひっそりと交流を続け、なんとか出口を探す努力が必要です」と語る。

   イ教授は「両国の当局者が交渉と対話の機会を作らないと、この状態が構造化してしまいます」と警告する。

   高野記者は「韓国には、日本がここまでやるのかという驚きがあり、部品から完成品までの流れが、こんなにできているのかといった認識もしたはずですです。表向きには大声は出せないが、早めの改善を望む韓国人は少なくないですね」と見る。

   一つのターニングポイントとして、高野記者は10月22日の天皇即位式典をあげた。韓国は李洛淵(イ・ナギョン)首相を派遣する予定で、対話の機会にできるかどうか。両国は「水面下では外交やNSCのチャネルで接触を続けている」(岩田記者)というが、感情論を超えて冷静なやり取りが果たしてできるのかは、まだまだ楽観できそうにない。

NHKクローズアップ現代+(2019年8月27日放送「どうなる"最悪"の日韓関係~解決の糸口はあるのか~」)

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