2024年 4月 24日 (水)

「台風15号停電」3日たっても復旧せず・・・高齢者の「熱中病死」広がる危険

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   台風15号によって、首都圏で約54万戸という大規模停電が発生した。東京電力によると、10日(2019年9月)までに84本の電柱倒壊が確認されて、これが広範囲の停電と復旧作業の遅れにつながっている。

   送電の仕組みからいうと、送電鉄塔が倒壊しても迂回路は確保できるが、街中の電柱が倒れると、迂回ルートがないため復旧に時間がかかる。現場を見たユニバーサルエネルギー研究所の金田武司氏は「風で飛ばされたトタンが、あちこちで電線に引っかかってショートして停電が起きています。街中の入り組んだ場所での電柱倒壊は、アクセスルートも限られており、復旧に時間がかかります」という。

   長引く停電は、人々の生活に大きな影響を与えている。君津市役所には水や食料、電源を確保しようと多くの人が詰めかけているが、とくに影響が大きいのは災害弱者と呼ばれる高齢者である。君津市の特別養護老人ホームでは200人の高齢者が暮らし、照明やポンプは自家発電で賄えるが、気温が30度あってもエアコンが利用できず、熱中症や脱水が懸念されている。窓やドアを開けて対応しているが、入居者がベランダに出てしまう心配があり、職員はひと晩中見回りを続けた。

   治療が難しくなる病院もあり、8人の患者が自衛隊のヘリコプターで別の病院に搬送された。自宅で暮らす高齢者夫婦も、停電でデイサービスの利用ができず、暑さと食料保存に悩んでいた。南房総市では、熱中症の疑いで93歳の女性が亡くなった。

   昨年(2018年)の北海道胆振東部地震のときのブラックアウト(全道停電)と比較して、復旧が遅れていることについて、京都大学大学院の安田陽特任教授はこう解説した。「北海道地震では被害地域は限られ、そのほかは無傷でした。一時的ダウンだったのですが、今回は台風の通り道に沿って面的に損傷が起きたため、復旧に時間がかかっています」

   北海道はソフトウエアのシステムのストップだったが、今回は電柱・電線というハードウエアがやられた。

鉄道「計画運休」で全社員に「在宅勤務」指示した会社も

   もう一つ大きな影響が出たのは交通網だった。首都圏の鉄道各社は計画運休を行ったが、それでも混乱が起きた。運行再開時間がずれたため、駅に乗客が滞留したのだ。関西大学社会安全学部の安部誠治教授は「鉄道会社だけでは限界があり、難しい」と社会全体での検証が必要と訴える。

   社員の9割近くが出社せず、在宅勤務にした企業がある。ソフトウエアメーカー「アステリア」は計画運休が発表された日曜日の夜に、本部長から全社員に在宅勤務を勧める通知を送った。

   平野洋一郎社長は「長い時間電車を待って、しかもギューギュー詰めで出社するなら、その時間を在宅で仕事したほうが生産性は上がります」と話す。東日本大震災をきっかけに、災害時は在宅勤務を促すようになったのだ。社員が気軽に在宅勤務を報告できる専用アプリを開発、さらにテレビ電話やタブレットなど、自宅でも仕事ができるインフラを整えた。

   しかし、インフラ系企業や介護、保育など、災害時も休めない仕事もある。東京大学大学院の廣井悠准教授廣井氏は対策として、「企業と社会両方が最適化を図るルール作り、たとえば災害時の出勤ガイドラインなどはあってもいいかもしれません。また、災害時は無理せず譲り合うこと。そして平時から働き方の見直しをすることが大事」と話した。

NHKクローズアップ現代+(2019年9月10日放送「都市生活はなぜ麻痺(まひ)した?~徹底検証・台風15号~」)

文   バルバス
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